でもあの時…

なんかひどく苦しそうに見えたのは…
あたしの勘違いかもしれないけど…
もしかしたら彼の方も、無理やり富美子を手放したんじゃ…。

それに、富美子の事なんてどうでもいいって思ってたら、そもそもあたしの名刺見てあんなに反応しないでしょ。

やっぱりそうだよ。
きっとあの人も…
富美子の事を思ってる…。

だってあの目は…

好きな人を思う切ない男の目だった…。


けどだからって、あたしが二人をくっつけるわけにはいかないよね。

きっとあの水谷って人は、くっつけない理由があるから会わないって言ったはず。
じゃなきゃお互い好き同士で別れるなんてあり得ないもんね。

けどよく考えてみたら、富美子はコクって振られたって言ってたよね?
て事は、両想いじゃないのか?
だったら今のあたしの仮説は成り立たない、か…。

あたしは考えても仕方のない事を考えてしまっていた。

富美子が不思議そうに声をかけてくる。

「ねぇ、尚美ちゃん、なんか話があったんじゃないの?」

あ、そうだった!

「あ、ごめん!…富美子が辛い時に…言いにくいんだけど…。あたしと富美子の仲だから言うね。実はね、あたし、氷メガネと付き合う事に…なったの…」

「ほんとに!?やったじゃん!おめでとう、尚美ちゃん!」

富美子は心から笑顔で祝福してくれた。