何を隠そうあたしも経済的に追い込まれたから保険の営業始めたわけだし。

シングルマザー率すごく多いのも事実だ。
うちの営業所だけで三分の一はいるだろうか…。

みんなが目を輝かせて色々聞きたそうにしているが、実際この仕事、合う人は合うし合わない人は合わない。
いくら事情を知ったところで要は自分がやれるかやれないかだけの問題。

だからあたしはみんなに言った。

「色々噂とかあるかもしれないけど…。厳しいのは間違いないです。自由があるかわりに、全て自己責任だから」

あたしの言葉にみんなは黙った。

沈黙を破ったのが、いちばん年が若そうな田代奈津子(たしろなつこ)という人だ。

「そう、ですよね…。実は、うちの母親がずっとこの会社で営業やってる人なんですよ。家に帰ってきても、誰かから電話がかかってきたら出かけたり、休みの日もいない事多かったです…。お金はあるから、いい暮らしはできてるけど…」

ああ…彼女が里田マネージャーの娘さんか…。
顔全然似てないな…。
お父さん似?

あたしはどうでもいい事が気になった。

「あたしも先輩に聞いたけど、決められた期間に決められた額の契約取らなかったらクビだって…ほんと?」

突然口を開いたのが、中本恭子(なかもときょうこ)という人だ。