電話を終えた氷メガネが携帯をあたしに渡す。

「あの…麻美は…なんて?」

「電話に出るなり怒鳴るなんてな…、ちょっと短気すぎやしないか?あれじゃ、マネージャーとしての資質を疑われるぜ…」

「で、麻美は何て言ってたの!?」

あたしが声を荒げると、氷メガネは思い出したかのように続けた。

「ああ、まず、今どこにいるのか、あたしじゃなく、所長に連絡するとは何事かとまくし立ててた。電話の相手がお前じゃないってわかった途端、シュンとしたけどな」

笑いながら言う氷メガネに向かって言う。

「当たり前じゃない!あたしの携帯からかけてるのに、違う人がしゃべり出したら誰でもビックリするわよ!」

「そうだな…うん。確かに尚美の言う通りだ」

妙に納得しちゃって…
そんな風に素直になられたらこれ以上言えないじゃない…。

「それで…その後はどうだったの?なんて言ってた?」

「その後はもう、"はい" しか聞こえなかったな。急に借りてきた猫みたいになってたよ」

そりゃ、あたしだと思ってしゃべってた相手が実は伊藤内務次長だってわかったら、麻美じゃなくてもそうなるよ…。

「大丈夫だよ、お前はなんも心配すんな。時田マネージャーがなんか言ってきたら、いつでも俺が出てってやる」

いやいや…
ちょっと違うでしょーよ!
コイツ、あたしの事過保護にしすぎなんだけど…。