あたしは自分の名札を見つけ、そこへ座った。

皆があたしの事を見ている…。

何か言わなきゃいけない?
でも、何を?

迷っていると「塚本富美子」と書いてある名札の席の人が口を開いた。

「あの…、飯田さん、ですよね?昨日は体調悪かったみたいですけど…大丈夫ですか?」

この人が塚本富美子さんか…。
なるほど妙子の言う通り人の好さそうな感じだ。

「あ…はい…。もう、大丈夫です…」

すると富美子の隣に座っている「志賀祐実(しがゆみ)」という人が質問してきた。

「あの…、飯田さんは以前営業されてた事があるって聞いたんですけど…そうなんですか?」

「…はい…。随分前だけど…。やってました…」

あたしがそう答えると一斉にみんなの顔が明るくなる。
そして矢継ぎ早に質問攻めにあった。

"営業は大変なの?"
"ノルマはあるの?"
"お給料は本当にいいの?"
"子育てと両立しやすいってほんと?"

まあ、どれもこれもやった事なければ気になるところではある。
しかも、誘致する時のお決まりの誘い文句が

「子育てしやすい」
「時間は自由に使える」
「お給料アップは自分次第」

という事なのだ。
これに惹かれて入社してくる人が圧倒的に多い。