そうだ。
一番聞きたいのは、やっぱり香菜さんの事…。

「あの…香菜さんは、一体、どういう…」

「ああ、香菜はね、俺の幼馴染…」

幼馴染…?
でも、ただの幼馴染じゃないでしょ?

あたしが思っている事を告げる前に、氷メガネの方から続きを言った。

「…で、俺の婚約者…」

頭が真っ白になるっていうのは、まさにこの事か…。
あたしはハンマーで頭を殴られたかのように、衝撃を受けた。

「婚約者…って」

「あ、でも、親同士が勝手に決めたってだけで、俺は結婚する気なんてないから。…お前以外とは…」

いきなり“君”から“お前”に変わった?

しかもなんか最後の方に、すごく嬉しい事を言ってくれたような…

でもまだ、聞きたい事が終わってはいない。

「それで…あの…異動になるって、ほんと?」

「…ああ、それはほんと。年内で本社に」

やっぱりほんとなんだ…。
あたしはわかりやすく落ち込む。

落ち込み過ぎて、他に聞きたい事も忘れてしまった。
黙り込むあたしに氷メガネが言った。

「ああもう…。なんだよ、落ち込むなって。
誰が一人で行くって言った?お前も一緒に決まってんだろ」

え?
でもあたしだって、そんな急には…
晴彦の事だってあるし…