久しぶりに入る氷メガネの自宅は、キッチン以外は相変わらず生活感がまったくなかった。

キョロキョロするあたしに、氷メガネが少し微笑みながら言った。

「別に前と何も変わっていませんよ」

突然そんな事言われて、あたしは自分の心の中を読まれたような気がした。
今まさに、ここに女の影を探してたから…

「彼女はここの場所を知らないと言ったでしょう」

別に、香菜さんだけじゃないかもしれないじゃん!

あたしは氷メガネに直接言うわけでもないのに、心の中で反発していた。

「座ってて下さい」

氷メガネはそう言ってキッチンへ入り、何やらゴソゴソと始めた。

少しして、湯気の出る二つの大き目なカップを持ってやってきた。

「どうぞ」

あたしの前に差し出されたのは、熱そうな飲み物…。

この匂いは…
ココアだ…。

まさかね、一瞬お汁粉かと思ったわ。

けど、コイツが作るって事は相当甘いんじゃ…。

あたしが迷っているのがわかったのか、氷メガネが言った。

「飲んでみて下さい。あなたのは甘さ控えめにしてありますから」

ほんとにコイツは読心術でも習ってんのか?