氷メガネについて行った先は駐車場だった。
久しぶりに見る高級外車。
少し前にこの車に乗ったのがまるで夢みたいに思える。

「どうぞ、乗って下さい」

あたしは迷わず後部座席のドアを開けた。

「なんでそちらなんですか?」

なんでって…
だってそうじゃない…。

「だって、助手席は…あたしが座る所じゃ、ないです、から…」

あたしはいつもの勢いが全く出ずに、か細い声で言った。

「それを決めるのはあなたではありません。決めるのは私です」

氷メガネはそう言って、あたしを助手席に座らせた。

香菜さんが乗った所と同じ所になんか、乗りたくないのに…
ほんとに女心がわかってないヤツ。

「どこに…行くんですか…?」

あたしは恐る恐る氷メガネに尋ねた。

「私の自宅です」

え?
ちょっと…待ってよ…。
そんな…鉢合わせとか、ヤなんですけど…。

「あの…あたし、それは…困ります…」

「なぜあなたが困るんですか?」

全くKYなんだから…。
そんな事言わなくてもわかってよ。

「だって…その…、香菜さんが…変な誤解されても、困りますから…」

「誤解とは?どういう意味でしょうか?」

あたしが意を決して言った言葉をいとも簡単に崩すんだよ、コイツは。