「痛っ!」

お互いの声が重なって、その後すぐにお互いに「すみません!」と言い合う。

顔を上げたそこにいたのは、ロングヘアのきれいな若い女性で、いかにもいい所のお嬢様って感じだ。
あたしとは真逆の所にいるような人だと思った。

けど…この人って…
確かどっかで見た事が…。

「大丈夫ですか…?けがは、ありませんか?」

心配そうに尋ねてくれる彼女に、「いえ、こちらこそすみません」と謝る。

頭を下げた時、床に彼女のものだと思われるバッグが落ちているのに気づいた。

「バッグが…」

そう言ってあたしは床にかがんで、バッグと近くに散らばった中身と思われるものを拾い集める。

「あっ、すみません!いいですよ、私がやりますんで…」

彼女は慌ててあたしと同じ目線にかがみながらそう言った。

「二人でやった方が早いでしょ?」

あたしはそう言って彼女に微笑みかける。

彼女もニコっと笑って、二人で一緒に拾い集めていると、後ろから声がした。

香菜(かな)…、何してる?」

あれ?
この声…どっかで聞いた事ある…。

そう思って振り向いたあたしが見たのは…

驚いて立ち尽くす氷メガネの姿だった。