「あっ!いえ!そんな…事は、ありません…」

否定しつつもどう見ても普通じゃなくなったその男性は、まだ半分以上も残ってるコーヒーを置いたまま、まるで逃げるように店を出て行った。

何あれ。
変なの…。

あんなにあからさまに態度変えなくてもいいじゃんね。
なんか過去によっぽど嫌な事があったんだよ。
じゃなきゃあそこまで挙動不審にならないって。

あたしは気を取り直して、タバコをもう一本ふかした。

ふかしながらさっきもらった名刺を見る。

TT建設株式会社 営業主任か…。



さてと、あたしもそろそろ帰るとするか。

会計を済ませ、駐車場に向かおうとした所で化粧品を買っていない事を思い出した。

そうだった!
もうちょっとで忘れて帰るとこだったわ。

あたしは駐車場とは反対方向に向かって歩いた。
化粧品売り場はむせかえるような匂いであふれている。

久しぶりに来るとレイアウトも変わっていて、あたしは自分の目指す売り場になかなか辿りつけなかった。

あれ…なくなっちゃったのかな…。

そう思いながらウロウロしていると、通路から突然出てきた女の人とぶつかってしまった。