『内務次長ですか?あいにく本日はお休みでして…。お急ぎでしたら連絡してみますけど…』

事務員のその一言はあたしのわずかな期待を見事に崩した。

「いえ…また日を改めます…。ありがとうございました…」

あたしはそう言って電話を切った。

休んでるんだ…。
じゃあ、やっぱり今あたしが見たのは…
間違いなくアイツだった可能性がある…。

いつもと違ってスーツじゃなかったから確証はないけど…
て事は、隣にいたあの女性は…カノジョ?

そうだよね…。
今までアイツから女の影をまったく感じなかったから決めつけてた。
そういう相手がいないんだって。
でもアイツだってまだ若いんだし、いたっておかしくないよね。

富美子…あたしも撃沈しちゃったよ…。

あたしは富美子と最後に会った時の彼女のあったかい笑顔を思い出していた。
そして、泣きそうな自分を奮い立たせる。

よかったじゃない。
コクる前でさ。
さすがに振られる事わかっててコクれるほど、あたしは心臓強くない。

これで…よかったのよ。

アイツがあたしに向けた優しさはやっぱり後悔からくる罪悪感だったと。
そう思う事にする。

疲れたあたしはなんだかタバコが吸いたくなってしまった。
ちょうどいい所に喫茶室が見える。
喉も渇いてきたし、あそこに入ろう。

あたしはほんの数メートル離れた所に見える喫茶室へ向かった。