着信が残ってるからあたしからの電話だって事はわかるはず…。

あたしは仕方なく余った時間をデパートにでも寄ってつぶす事にした。

このデパートはI市の駅前にあるデパートの本店で、高級な品物が揃う場所。
平日の午後はいかにもセレブな奥様たちでにぎわっていた。

あたしは駐車場との連絡口になっている二階の婦人服売り場で服を見ながらブラブラする。
そうだ、もう化粧品が少なくなってたんだった。
確かここにもあたしが使っているメーカーのがあったはず。

そう思ったあたしは、化粧品売り場がある一階に向かうために下りのエスカレーターに乗った。

エスカレーターに乗りながら何気なく反対側の上りのエスカレーターを眺めていると、そこにはあたしが会いたくて会いたくて仕方のない人が乗っていた。

でも…
その人は一人ではなかった…。

隣には…
あたしの知らない女の人がいた。

衝撃で思わず目を逸らす。

どういう事?
見間違いだろうか?

そう思ったあたしは一階のフロアの片隅へ行き、支社に電話を入れた。

『ありがとうございます。KK生命保険株式会社、M支社、沢田でございます』

いつもの事務員が電話口に出る。
あたしは平静を装い、氷メガネがいるかどうか尋ねた。