「尚美ちゃん…」

富美子なら、仕方ないなぁ…と言って、笑い飛ばしてくれるかと思った。

でも違った。

富美子は沈痛な面持ちで話し始めた。

「実はね…あたしも好きな人がいるの…。ダンナ以外に…」

え…
何?
そんな話、初耳だけど…。

「昔から知ってる人なんだけど、最近は全然連絡とってなかったの。元々すごく素敵な人だとは思ってて…。でもそれは恋愛感情ではなかったんだよ?で、この仕事始めてから久しぶりに連絡したんだ。色々協力してもらおうと思ってね。それで度々お願いしに行ったりして交流してるうちに、なんか…好きになってしまったんだよね…」

「本気で好きなの?その人の事…?」

富美子の顔を見れば一目瞭然だったけど、敢えて質問した。

「…自分では、そう思ってる。気がついたらいつもその人の事考えてて…」

そう…なんだ…。
富美子の様子で、その恋は決して幸せな恋じゃないとすぐにわかった。

「…富美子も、苦しんでるんだ…」

「…………」

普段の底抜けに明るい彼女とは思えないような雰囲気に、あたしは戸惑った。

「忘れようと思う?その人の事…。諦めなきゃいけないって思ってるんじゃないの…?」

あたしのその言葉で、今度は富美子が涙を流した。

「ごめん…。尚美ちゃんの話聞きに、来たのに、あたしが…泣いたり、して…」

すすり泣きながら富美子はあたしに謝った。