「だけどね、それでも脈がないとは思えないの。だって、あたしに口止めしてまで異動の話したっていうのはどう説明するの?言う必要ないでしょ?けど、きっと内務次長はあたしの行動を読んでて…。あたしが尚美ちゃんに話をするって思ってるから、あたしを通して尚美ちゃんに伝わるようにしたんだと思う」

富美子の分析は、一理あるけど…

「異動の話は、遠回しで断る口実とか…」

あたしがモゴモゴと言うと、仏の富美子もキレた…。

「もうっ!尚美ちゃん、いい加減にしな!あーだこーだ言っても仕方ないって、こないだも言ったじゃん!わかったよ。言いたくないなら言わないでいな。後悔したって知らないからね!」

ちょっと…富美子…。
見捨てないでよ…。

あたしは情けないくらいヘタレな自分が嫌になった。

あたしはしばらく考えてから、再び富美子に尋ねた。

「何か他に…アイツは他に何か言ってなかった?」

あたしの質問に歯切れ悪く富美子が答える。

「え?う、うん…。異動の話だけだよ。尚美ちゃんの話は、本人にしかしないって」

そう、なんだ…。
あたしが富美子の言う通り、素直にアイツに自分の気持ちを伝えたら。
果たして真面目に聞いてくれるのか、それとも予想通りこっぴどく振るつもりなのか…。

ふたつにひとつ。

ああ…だけど…
振られるのが…やっぱり怖い…。

アイツにハッキリと拒否されたら…
きっと耐えられない。

ほんとにまいるわ…。

いつの間にこんなに…
アイツの事、好きになっちゃってたんだろ…。

あたしは再び涙を流してしまった。