あたしの番号削除されてなければいいけど…

少しの不安に苛まれながら、ひたすら呼び出し音が切れるのを待っていた。
するとブツッと呼び出し音が切れ大きな声が聞こえてきた。

『やだ～！ちょっと、飯田さん！？』

ここにもハイテンション娘…いや、オバサンが一名…。

「雲居さんお久しぶりです。いきなり電話なんかしてすみません。今、大丈夫ですか？」

『いいよいいよ！どした？』

「雲居さんもうご存じだと思いますけど、あたしまた、営業に復帰しました…」

『うん、見たよ！入社式の式次第に名前あったからね。でも体調不良で欠席だったでしょ？大丈夫？』

「はい…ちょっと緊張しすぎたのかお腹の調子が悪くて…。でも、もう大丈夫です」

『気をつけてよ～。お互いもう若くないんだから、ねっ！』

ですよね…。しかもあなたはあたしより確か八つは年上でしたよね？

でもほんとに、いっつも元気ですよね？
できればその元気をわけて下さい…。

そう思いながらあたしは話を続けた。

「実は、お電話したのは聞きたい事があって…。あの…第二営業所に入った人ですけど…、どんな感じの方なんですか？」

『ああ。富美子の事？大丈夫、大丈夫、飯田さんが心配するような子じゃないって。すごい素直で純粋な子だからね。それに天然で面白い子だよ』

「それを聞いて安心しました…」

『もしかして…やっぱりまだ…過去のしこりが残ってる…？』

妙子は一見明るすぎて調子がいいだけの人に見えるが、実はすごく観察眼がある上に気遣いの出来る人だ。
あたしは妙子のこういうさり気ない優しさが好きだったりする。