「尚美ちゃんたら、ほんと余裕ないね」

あたしはバツが悪くなってうつむいた。

「なんて言って、会ったの?富美子」

「うん?そうだね…。ちょっと同期の事で話があるって言って。最初は名前も伏せたよ」

同期って言っても、その中でアイツと関わりがあるのはあたしだけだ。
名前は伏せたとしても、バレバレだったよね…。

富美子はそのまま続けた。

「尚美ちゃんの話だとは…思ったみたいよ。あたしが言う前に、"飯田さんに何かあったんですか?"って聞かれたから」

やっぱりバレてるし…
でもアイツの方からあたしの名前を出してくれた事が、単純に嬉しくて…

いつの間にこんだけハマっちゃったんだろ、あたし…。

「でもね、内務次長に言われたの。尚美ちゃんの話をどうしてあたしがするのか…って。話したい事があるなら、人に頼まずになんで自分で言わないのかってさ…」

いかにもアイツが言いそうなセリフだわ…。
でもさ、自分で言えないから頼んでるんだし。
ほんと女心わかってないんだから。

あたしが黙ったままでいると、富美子は心配そうな表情で続けた。

「…それとね、尚美ちゃん。内務次長、異動になるんだって…。年内には本社に戻る、らしいの…」

「嘘…」

なんで、今頃?
異動の時期なんかじゃないのに…