富美子の提案にギョッとしたあたしは露骨に拒否をしてしまった。

「ちょ、ちょっとっ！それは無理よ！無理だって！」

「なんで？」

「だって…。絶対に…あたしの、片、思いだし…」

富美子はハーッとため息をつき、あたしの目を真っ直ぐに見据えながら言った。

「片思いって決めつける根拠は？」

な、なによ、アンタ…。
氷メガネみたいな…言い方して…。

「こ、根拠って…。それは、その…。だって、あたしとは…ケンカばっかしてたわけだし…」

「それは尚美ちゃんだっておんなじでしょ？ケンカばっかしてた内務次長を好きになったんだから。内務次長だってもしかしたら尚美ちゃんと同じ気持ちかもよ？」

まさか…
まさか、アイツもあたしの事…？

いやぁ…ないない…。
あるわけないよ、あんだけ言いたい放題言えるんだから。

でも…

あたしにあそこまで優しくしてくれたのは…
どうして？

同情でも罪滅ぼしでもないって言ったのはアイツ自身だもんね。

あたしはああでもないこうでもないと、あれこれ考えてしまう…。

そんなあたしに富美子が突っ込みを入れる。

「尚美ちゃん…。内務次長の気持ちは内務次長にしかわかんないんだよ？尚美ちゃんが考えてわかんない事を考えるのってしんどくない？だったらハッキリ本人に聞いた方が早いって」

「いや…でも…。それができないから悩んでるんだってば…」

あたしは力なくそう言った。