あたしはこんがらがりながらも、なんとか最近の出来事を富美子に話す事ができた。
うまく順序立てて話せてはいないけど、気持ちはわかってもらえたような気がする。

こんなに自分の気持ちを素直に誰かに話したの…
いつぶりだろう…。

麻美にも言えない事をなぜか富美子には話せる…。
彼女の持つオーラなのか聞いてほしい衝動に駆られてしまう…。

そして、そんな富美子があたしの話を全て聞いて最初に放った言葉。

それは

「尚美ちゃん、好きなんだね。伊藤内務次長の事」

だった…。



富美子に指摘された事は…
まさにあたしが見て見ぬふりをしていた自分のほんとの気持ち…。

どうしても認めたくなかった…。
あんなにムカついてた、この世で一番嫌いだと思っていた男をよりにもよって…

「そう…、なんだね…」

あたしは自分の事をまるで他人の事のように言ってしまった。

氷メガネを好きだって認めてしまえば。
…あたしは…
自分が自分でいられなくなるような気がしてた…。

でも…どうしてだろう…。

富美子にハッキリ言ってもらって、どこか気持ちがラクになってる…。

気づいたら頬に涙がつたっていた。

「尚美ちゃん…ほんとは、辛いんでしょ…?内務次長の気持ちを…ちゃんと確認した方がいいと、思う…」