「別に結構よ!アンタにかわいいって言ってもらえなくても、他に言ってくれる人はいっぱいいるから!」

ほんとはそんな人いないけど、嘘も方便よ!

「へぇ…そんなヤツがいるなら会ってみたいもんだな。かなり貴重だぜ。天然記念物級だな」

さっきまでわずかに口角をあげていただけの唇は、あたしの言葉を全く信じていないのを証明するかのように、完全に三日月型に割れている。

クゥ…言わせておけば…
調子にのりやがって…。

「もったいなさすぎて、アンタにだけは会わせたくないわね」

「無理すんなって。どうせそんなヤツいないんだろ?」

「失礼な!どうしてあたしが無理なんてする必要あるのよ?いるからいるって言ってんの!アンタに関係ないでしょ!」

「…確かに俺には関係ないかも、な…」

そうよ、関係ないわよ!
あたしにそういう人がいようがいまいが、アンタには…

全然関係ない…。

「そうよ…。全然関係ないんだから…。だからアンタもあたしなんかに構ってないで、自分の事考えた方がいいわよ」

「言われなくてもそうする」

ホントに人をムカつかせる言い方すんだから、コイツは!

「一応、お礼言っとくわ。ごちそう様でした」

「お粗末様」

氷メガネはぶっきらぼうにそう言って、あたしに背を向け玄関へ向かった。