氷メガネ個人としては…

藤堂の事もあたしの事も…どこにも証拠がなかったわけだから、自分の個人的感情だけでどっちかを信用するなんて、そりゃできないわよね…。
まあ、それで今回の藤堂の復帰も反対しきれなかったって…事か…。

「内務次長の立場なら…その判断も仕方ないですよね…。藤堂の件も、確証がなかったわけですから…。怪しいと思うって理由だけでは支社長に対して説得力ないですもん…」

あたしのフォローは何の意味もないかの如く、氷メガネの表情は暗いままで。
さっきよりも更に低い声で続きを話し始めた。 

「生方さんから話を聞いて、俺は間違っていたんだとわかった。濡れ衣を着せられた君が退職にまで追い込まれた事は、俺の…せいだと…。でも俺は…そう思っていても、そのまま事実を聞かなかった事にしようとした。
君に今さら事実を告げた所で、過去を変えられるわけじゃないから…」

氷メガネの表情が曇る…。

「だけど…、君と関わる事が増えて行くうち…、このまま知らん顔を続ける事が…その、苦しくなったんだ…」

へぇ…意外と正義感が強いのね…。
臭いものに蓋、平気でできるタイプかと思ってた。

今まであたしが抱いていた氷メガネの印象は…
あたしがどんな仕打ちを受けていたとしても平然として、むしろざまあみろって思ってるように感じてたけど…。

そんな風に心で思っていただけのつもりが、やっぱり顔に出ていたようで。
氷メガネにすかさず指摘された。