「藤堂が復職した時は、まだ生方さんの話を聞く前で…、事実を把握できていなかった。それに、今の支社長は藤堂の一件をご存じない。ただ、復職の話が出た時に一度だけ支社長から相談を受けた。今まで通りにマネージャーとして復職させようと思うがどうだろうかと…」

とんでもない事だわ…。
そんな事したら、またあたし達同様に苦しむ職員ができちゃう…。

「だが…俺は相談を受けた時、なぜか直感的にそうしてはいけないような、気がしたんだ。それで支社長に、今のような役職を敢えて作る事を進言した」

「なぜ…内務次長は、そう思ったんですか?あたしが辞める事を決めたあの時、あたしの言ってる事を信じてくれてるのかって尋ねたじゃないですか。でもその時はあたしの事、疑ってましたよね?」

氷メガネの目が、メガネの奥で少し大きく見開かれた。 

「…疑っては…いない。ただ、君の事をよくわかっていないのに、百パーセント信用する事は、できなかった。それは…藤堂についても同じだ」

「あたしの事も、藤堂の事も、あなたは信じていなかった…」

「申し訳ないが、俺の立場は、あくまでも中立でいなければならない。
確たる証拠がないのに個人的な感情でどちらかを味方する事は…許されない…。だけど、心のどこかで…藤堂の事は…引っ掛かっていたのかもしれない…」

そう話す氷メガネは、いつもの慇懃無礼な態度ではなく…
どこかしら苦しそうに見えた…。