これは…?
あたしの嫌いなほうれん草じゃん…。

でも、ホワイトソースが信じられないくらいおいしいんだけど…。

「それは、ほうれん草のクリーム煮です。少し柔らかめにしてあるので、消化にもいいですよ」

コイツ、なんでこんなに料理うまいわけ?
そっか、自炊が長いせいで必然的にうまくなったって事か?
それにしてもプロ級だよね…。

「そこにパスタを合わせて焼くと、グラタンにもなります」

グラタンだって!?
なんでコイツはあたしの大好物を知ってるんだ!

「念のため、マカロニを買ってきました。お宅にもあるかもしれませんが、乾物なので、とっておけます。だぶっていても大丈夫だろうと思いまして」

ほんとにコイツ、行き届きすぎなんだけど…。
一家に一台、欲しいよね。
いやいや、ロボットじゃないんだからさ。

だけど…やっぱり違和感がぬぐえない。
いくらなんでも、親切すぎるんだけど…。

あたしはやっぱり黙っている事ができず、思い切って氷メガネに尋ねた。

「内務次長…。どうして、あたしにこんなに親切にして下さるんですか…?
あなたとあたしは…天敵同士だったはずです…。顔を合わせれば言い合いをするような…。それがなんで、こんな風に…」

「…………」

氷メガネは黙ってしまった。

変な事、言っちゃった…。
もしかして怒らせちゃった?

「すみません!今のは忘れて下さい…。人にやさしくしてもらうのに、慣れてないんで…。思わず聞いちゃいました…」

わざと、ふざけたように言ってみたけど…
なんか、虚しい…。