氷メガネの憎い男

「…やっと…笑いましたね…」

「え…?」

「その方がいい、と…思います…よ」

何…この感じ…?
今までのあたしと氷メガネにあるまじき…
優しい空気が…

なんだか…かえって怖いんですけど?

氷メガネの顔が…
メガネの下の瞳は、信じられないくらい優しいっていうか…

あたしはなぜか急にドキドキし始め、妙な沈黙があたし達を包む。

でもその沈黙は、この雰囲気にそぐわないあたしの腹の虫が鳴る音で破られてしまう。

『グーッ!』

あたしは恥ずかしすぎて顔から火が出そうだった。

「…熱いうちに…食べて下さい…」

氷メガネは声もなんだか優しくなったような…
気がする…。

「いただきます…」

とは言ったものの…。
見ると野菜がほんとにたくさん入ってる…。
だいじょぶかな…。
あたしは少しだけ、スプーンですくって口に入れてみる。

あれ…?
なんか、甘い…。
ピーマンとか色々野菜が入ってるのに苦くないじゃん…。

確認のためもう一口、食べてみる。
やっぱり苦くない。

そうやってあたしは一口、もう一口と食べ進めた…。

「いかがですか、お味の方は?」

あたしの反応を見て氷メガネが聞いてきた。

「あの…野菜が甘くて…おいしい、です…」

気が付くとあたしは全部平らげ、もうひとつ別のお皿に盛りつけられているものも食べてみた。