氷メガネの憎い男

って事は…
やっぱり、あれは夢じゃなかったんだ…。

「おい、母さん、聞いてる?それとこれ、母さんの荷物だって」

晴彦はそう言って紙袋を二つあたしに渡した。

中を見るとひとつはスーツが、もうひとつには新品のハイヒールが入っていた。

何よ…これは…
アイツが…くれたって事?

でもこの靴があるって事は、あたしが履いてたヤツは?

慌てて玄関に見に行くと、きれいに揃えられたハイヒール。
片方を取ってかかとの部分を確認すると…、傷ついて剥げていたはずの所がキレイになっていた。

まさかこの靴の修理まで?
何よ、余計な事して…
アイツ、一体どういうつもりよ…。

「ねぇ、車は?母さんの車、どやって戻ってきたの?」

「代行のおっさんが乗って来てたけど?何、それも知らねーの?」

晴彦はいよいよあきれ返って部屋を出て行った。
学校行ったのかも…。

あー、ダメだ…。
考えてたらやっぱ頭痛いわ…。

寝よ!
とにかく寝てしまおう!

再び布団にもぐりこんだが、何故か空腹を感じて眠れない…。

お腹減った…。
けど何も食べるものがないよね…。
そこでふと、さっきの晴彦の言葉を思い出した。

確か…氷メガネから何か食べるものを預かったって、言ってなかったっけ?

あたしは布団から這い出し台所に向かった。
冷蔵庫を開けるとうちのじゃない保存容器がある。
出してみると中に白いものが見えた。

やっぱり!
クリームシチューだ!
あたしは早速レンジでチンして頂いた。