「わかったでしょう？そんな無駄なお金を使う必要はありませんよ。私が送ると言ってるんですから、素直に言う事を聞きなさい」

この…俺様ヤローめ！

何よ…
いくらエライ人でも、アンタはあたしより五つも年下じゃないよ！
心の中で文句をつけているあたしに、氷メガネがダメ押しの一言を発した。

「しかも今、あなたは調子が悪いのですから」

いや、これ以上アンタと一緒にいるともっと悪化しますから！
黙り込むあたしを見て納得したと勘違いしたのか、氷メガネが席を立って言った。

「それでは行きましょう」

「いや…だから、いいんですってば…」

あたしは慌てて席を立って、氷メガネを止めようとした。
が、フラついてよろけてしまう。

倒れると思ったその瞬間、力強く氷メガネに支えられた。

「だから言わんこっちゃない…。素直に言う事聞けって言ってんだろ…」

嘘…
誰、今の…？

あたしがボーゼンと氷メガネを見ると、そのメガネの向こうにある瞳が優しくあたしに微笑みかける。

夢か…？
それとも熱のせいで頭が朦朧として、幻覚でも見てるのか…？

その後は何も言えず、ただ黙って氷メガネの後について行くしかなかった。

車の中で再び睡魔が襲ってきたが、今度こそ寝てはいけないと必死に目をこする。
すると運転していてあたしの事が見えていないはずの氷メガネに、また言われてしまう。