「さきほど…寝ていたあなたをここまで運んだ時…、少し体が熱いように思いました。食べ終わったら、これを飲んでおいた方がいいかと思います」

そう言って氷メガネは風邪薬をテーブルの上に置いた。

「すみません…。なんか…迷惑かけちゃって…」

「いえ。慣れてますから」

はい?
なんなの、コイツ…
あたしがいつも迷惑かけてるみたいな…
素直になったかと思ったら嫌味を言ったり。
ほんとわかんない。

言われた通り風邪薬を飲んで、あたしは氷メガネに言った。

「あの…内務次長…。すみませんが、タクシーを呼んでもらえますか?」

「帰るのなら、送ります」

「いえっ!これ以上迷惑かけられないんで…。タクシーで帰ります…」

氷メガネは少しうつむいて言った。

「タクシー代、すごくかかると思いますよ?」

「え?どういう事ですか…?」

「ここがどこか、ご存じですか?」

「内務、次長の…ご自宅、ですよね…?」

「フッ…」

え、今…、笑った…?

「確かにここは私の自宅です。でもここはI市ではなくて、M市ですよ?」

な、なんだって!?
思えば遠くへ来たもんだ…。
なんて言ってる場合じゃない!

それはマズイ…。
確かにタクシーじゃ、軽く一万はかかる…。
いや、もっとかかるわ。
多分、二万?