「どうぞ、座って下さい」

あたしはダイニングテーブルの椅子に座った。
ふたつあってどっちに座るか迷ったけど、適当に選んだ。

「狭くてすみません。普段は私が一人で座るだけなので、その大きさで充分なんです」

「あ…いえ、大丈夫です…」

あたしの前に、ホカホカと湯気のたったシチューが置かれた。

「おいしそう…」

スプーンを渡され、おずおずとすくって口に入れた。
何これ…おいしい…。

ていうかすごく優しい味なんですけど…
これってやっぱりコイツが作ったんだよ、ね?

「いかがですか?」

氷メガネが自分のシチューを持ってテーブルに来た時には、既にほぼ食べ終わってしまっていた。

「あ…」

あたしが恥ずかしさにうつむくと氷メガネは、「お口に合ったようですね」
とだけ言って微笑みながら、あたしの向かい側の椅子に座った。

なんか信じられない…。
氷メガネと向かい合って食事してるなんて…。

こんな姿、麻美が見たら卒倒するだろうな…。

「さきほど…」

「へっ?」

氷メガネがいきなり話を始めたので、あたしはビックリして変な声を出してしまった。