コツコツとヒールのかかとを鳴らしながら歩いていると、無性に泣きたくなってきた。
なんであたしこんなに腹が立ってるんだろう…？

どうもアイツと話すと調子が狂う…。
いつも気持ちが乱されて…
ほんと、ムカつく！！

「あっ！痛っ！」

勢いよく歩きすぎて溝にヒールが引っ掛かり、転んでしまった。
躍起になって引っ張り出すとかかとに傷がついてしまう。

もぅ…
なんでこう次から次と…
あたしはヤケになってハイヒールを投げた。

そしてそのまま歩道に座り込んで動けなくなった。

うなだれているあたしの前に、スッとハイヒールが差し出された…。
驚いて見上げると、そこにいたのはまたもや氷メガネだった。

あたしは怒鳴る気力も失ってしまい、ただつぶやくように言った。

「しつこいわね、アンタも…」

すると相変わらず涼しい顔のまま少しだけ口角をあげて氷メガネが言った。

「靴もいりますね」

もう、逆らうのも疲れた…。
あたしは氷メガネの言われる通り従う事にした。

疲れがピークに達していたのだろうか？
あたしは再び乗ったアイツの車の中で、不覚にも寝てしまった…。

ようやく気付いた時には、知らない部屋の…

ベッドの上だった…。