振り向くとそこには、息を切らした氷メガネがしっかりとあたしの腕をつかんで立っていた。

「どこに行かれるんですか?」

息は切らしているもののその表情は相変わらず無のままだ。

「あの…やっぱりあたし…いいです。スーツ…いりません…。帰ります…」

でも氷メガネは、掴んだままの腕を離してはくれなかった。

「離して…下さい」

「離しません」

「なんでっ!?」

あたしは怒りに任せて、荒っぽい言い方をしてしまう。

「お詫びをしたいと申し上げたはずです」

「だから…いりません!あたしのキャラじゃないんですってば!こんな高いお店のスーツ、あたしには似合わないから!」

「それを決めるのはあなたではありません…」

「は?何言っちゃってんの?いい加減にしてよ!アンタとは住む世界が違うんだから、これ以上あたしに関わらないでよ!大体、もう二度とあたしとは関わらないって言いましたよね?」

「…………」

「とにかく、スーツの件は、気にしないで下さい。お気持ちだけ、有難く頂戴しておきます…」

あたしはそれだけ言って営業所の方向に歩き始めた。