別に隠しているわけじゃないなら、あたしだってそこまで切り札に使えないし、どうでもいい。

「内務次長が甘党なのかどうかなんて、誰も興味ないと思いますから」

あたしはぶっきらぼうにそう言った。
すると氷メガネはそれ以上その事には触れず、スーツの話に戻った。

「先ほどあなたが仰った、高いスーツは必要ないというお話ですが。もし明日、あなたがスーツがないという理由でお仕事をお休みしたとします」

コイツ、一体何を言いだすんだ?
あたしは訳がわからない思いで氷メガネの話を聞いていた。

「一日お休みした場合の損失額は今のあなたの月給から換算した日給を考えてみれば、いくら高いスーツといえども妥当だとは思いませんか?」

なんか訳わかんない…。
まあいっか…。
考えてると、なんだか頭が痛くなってくる…。

「わかりました…。内務次長にお任せします…」

氷メガネはあたしがそう言うと、わずかに口角をあげ微笑んだかのように見えた。

「はじめからそうおっしゃればいいんです」

婦人服売り場に行くのだろうと思っていると、氷メガネが行った先は紳士服売り場だった。

不審に思うあたしとは裏腹に、氷メガネは売り場の店員と何かを話している。
そして話していた店員がいなくなったと思ったら、すぐに女性の店員があたし達の方に向かってやってきた。