『はい。KK生命保険株式会社、M支社、沢田(さわだ)でございます』

「あの…本日面接をしていただきました飯田と申しますが…」

あたしは直接氷メガネに言うべきかどうか、迷っていた。
当然ヤツに言うのが筋だとは思っていたけど話す事そのものが嫌だった。
もしかしたらまだ支社には戻ってないかも。
面接があったビルはI市でそこからM市の支社までは車で小一時間はかかるから。

あたしはそれに期待した。

「面接の事で、お話があるんですけど…」

そう言うと沢田と名乗った事務員がすぐに、『内務次長にかわりますので少々お待ちください』と言った。

あちゃー…
戻ってたよ…。

はぁ…どうあってもアイツとしゃべらなきゃいけないってことか…。

しばらくすると通話口からヤツの冷たい声が聞こえてきた。

『お電話かわりました。伊藤です』

「あの…飯田、です」

『あぁ、はい。今日はどうもお疲れ様でした。どうかされましたか?結果はハローワークを通じて、と申し上げたはずですが。飯田さんが以前勤めていた事がある人であっても、直接はお教えできませんよ、残念ながら』

グッ…
コイツはやっぱりあたしを煽ってる…。

でもここで争うのは得策じゃない。目的はコイツとのバトルじゃない。
あたしの目標はそれこそもっと、高い高い所にあるんだから。
心を落ち着けて静かに丁寧に答える。

「いえ…。結果を聞きたいのではありません。あの…実は…辞退したいんです」