氷メガネとのすったもんだのせいでタバコを吸い損ねた。

喫煙室に戻った時は祐実も奈津子もいなかった。
おそらく研修の部屋に戻ってるんだろう。

慌てて時計を確認すると休憩時間は残り五分しかなくて。
あたしは仕方なく、コーヒーをすすって部屋に戻った。

午後からのトレーナーの講義はすごくわかりやすい内容で、これからの営業活動に役に立ちそうな事ばかりだった。

福富トレーナーは相変わらず教え方が上手で。
途中何回か当てられて参ったけど…。

それでも無事にその日の研修は終了した。

今日はそのまま直帰してもいいらしい恭子と富美子が、お茶しようと誘ってきた。

祐実と奈津子は子供の調子があまりよくないらしく、早めのお迎えに行くからと言って帰って行った。
あたしはどうしようか迷ったが、やっぱり久々に二人と話をしたくて一緒に行く事にする。

営業所にいったん顔を出してから駐車場へ行くと言って、営業所へ戻った。


入口のドアを開け自分のデスクに向かうと、空いた席に意外な人物が座っていた。

ちょっと…
なんで…氷メガネがいるのよ…。

あたしはわざとらしく無視をして自分のデスクに戻り、引き出しの鍵を開けて研修の資料をしまった。