そしていとも簡単にはさまっていた缶ジュースを取り出した。

「はい、どうぞ」

そう言って氷メガネにジュースを渡そうとして気づいた。

その缶は…
正確にはジュースではなく…

「おしるこ」だった。

そうだった…。
コイツは無類の甘党だった…。
あたしは吹き出しそうになるのを必死に堪え、氷メガネに手渡した。

そして自分の目的のものを買おうと財布を開いた時、うしろから蚊の鳴くような声が聞こえた。

「…ありがとうございました…」

今…
ありがとう…って言ったの?

…言ったよね…?

あたしは勝ち誇った気分で、「どういたしまして」と言い、目的のコーヒーを買って再びエレベーターホールへ向かった。

氷メガネは唖然としたまま自販機コーナーで立ち尽くしていたが、あたしは関係ないと思ってそのまま放置した。

アイツ、なんか変だったな。
大体なんでアイツがここにいたんだろ?

だけど、天下のKK生命の内務次長が缶入りのお汁粉って!

これはおもしろすぎるわ。
みんなに教えてやろっと。

…でも、まあ…いいか。

これは…

アイツが甘党だって事は…
最後の切り札でとっておこう。

なぜだかわからないが、あたしはそう思った…。