「さっきから何に手間取っているんですか?」

あたしの質問に、氷メガネがわかりやすく動揺する。

「いえ別に…。何でもありません…」

動揺を隠しているつもりだろうけど、バレバレだから。

「それならあたし、その自販機に用があるんで、どいてもらえます?」

あたしはそう言って自販機の前に出ると、氷メガネは焦ってあたしの腕をつかんだ。

「ちょ、っと、待って…!」

いきなり掴んできた氷メガネの、意外な力強さに戸惑う。
コイツ、ヒョロヒョロ見えるわりには結構力あるんじゃん。
やっぱ男だね…。

「なんですか!素直に言いなさいよ!」

思わず怒鳴ってしまった。
ヤバいと思ったあたしの予想とは裏腹に、氷メガネは言った。

「…実は…。ジュースの缶が取り出し口にはさまったまま取れないんです…」

え?
何、どうしたって?
ジュースが出ない?

あたしはかがんで取り出し口をのぞいた。

あ…ほんとだ。
斜めになっている缶と、取り出し口のアルミ板のようなものが微妙な形になっている…。

あたしは迷う事なく取り出し口に手を差し込んだ。

「飯田さん、危ないですよ!」

とっさに氷メガネがあたしを制したが、既にあたしは手を差し込んでいた。