出戻りのあたしは、昔一度取得した資格でも、辞めてしまえば再び試験を受けなければならなかった。

営業活動をしながらの勉強は正直大変で。
勤務時間中は出来ないから、帰宅後夜遅くまで勉強しなければならない。

加えて同じ階級の研修も毎月行われる。
研修そのものはめんどくさいが、同期に会える事は嬉しかった。
それぞれの営業所で奮闘している仲間として、会うといつでもお互いに励まし合っている。

今日は一番下っ端のあたし達が集まる研修。
福富トレーナーが担当の研修だ。
トレーナーの研修とはいえ出席するのはあたし達、営業職員だけではない。
各営業所の所長と、支社から営業次長も支社長も同席する。

わりと緊張する研修だ。

研修が行われる会議室では、ホワイトボードに書かれた名前の所に座らなければいけなくて、あたしは同期がどこにいるのか探すのに苦労してしまう。

キョロキョロしていると富美子が大声で「尚美ちゃ~ん!久しぶり~」と言っていきなり抱き着いてきた。

「ちょ、ちょっと富美子!いくら久しぶりだからっていきなり抱き着かないでってば!」

「ごめんごめん、つい嬉しくて…」

相変わらず人の好さそうな所は変わってない。
この仕事って他人からとやかく言われる事も多くて、人間不信になる人もいるから。
富美子がそうなっていない事に安心する。