「内務次長にはもったいなくて会わせられませんね!」

「そうですか。私もそんな人には会いたくありませんね。どう考えても価値観が合いそうにないですから。ああ、これで清々します。
これからはもう、あなたのそのふてぶてしい顔を見なくても済むんですから」

何よコイツ!
あたしとなんか、数えるほどしか会ってないじゃん!
あたしの顔見る機会なんてほとんどなかったってのに、何その言いぐさは!

「それはこっちのセリフですよ!あたしの方こそ、その感情のこもってない冷たーい目を見ないで済むと思うと、嬉しくて嬉しくて!」

氷メガネの顔がわかりやすいくらい赤くなっていく。

ヤバ…
マジで怒らせたかも…。

「…言いたい事は…それだけですか…?」

氷メガネの声はものすごく低くて、まるで地鳴りのように聞こえた。

「はい。これでほんとにサ・ヨ・ウ・ナ・ラです!もう二度と会う事はないと思いますよ」

「できればそう願いたいですね」

温かい支社長の気持ちが心にしみていい気分で締めくくろうと思ってたのに、なんの因果でコイツと言い合いしなきゃいけないのよ…。

この時のあたしは、自分が再びこの会社に舞い戻る事になるなんて全然思ってなかった。
だからこんな思い切った事も言えたんだよね…。

そしてあたしは会社を去り、辞める予定だった支社長は会社に残った。

支社長はあたしが辞めた直後に、M支社から別の支社に異動になったと、(のち)に麻美から聞かされたのだった…。