「早速だけど査問委員会の結果、飯田さんの処分が決定したのでお伝えします。伊藤くん」

支社長が氷メガネの方を一瞥すると、氷メガネは一枚の書類を手渡した。
その紙にはあたしの処分内容が書かれているようだった。

支社長はあたしの顔を見る事なく、その紙だけに視線を落としたまま言った。

「飯田尚美。あなたを一週間の謹慎処分に処する。以上。
ＫＫ生命保険株式会社代表取締役社長、轟久吉(とどろきひさよし)」

今…なんて…？
謹慎処分？
一週間？

あたしは支社長が読み上げた処分の内容があまりにも軽い事に、驚きを隠せなかった。
そして困惑しているあたしをよそに、支社長が続けて言った。

「飯田さん、わかりましたか？明日から、一週間自宅謹慎して下さい。
その後は、今まで通り業務に邁進して下さいね」

支社長のあったかい笑顔はあたしの堪えていた涙をアッサリと引き出した。

ヤダ…あたしったら…
氷メガネの前で泣くなんて…

絶対嫌だったのに…
そう思うのに、涙はあたしの気持ちに反して止まってはくれなかった。

そして支社長は「それじゃあね、日比谷くんたちに宜しく」と言った。

あたしは深々と支社長にお辞儀をし、心からお礼を言って部屋を出た。

エレベーターを待っているあたしの隣に、いつの間にか氷メガネが立っていた。