いつも冷静だという噂の氷メガネにしては珍しく、焦っている様子は貴重だった。

「すみません…。知らない番号だったもので…」

『あ、そうでしたね。すみません。職権乱用で調べさせて頂きました。
でもご安心下さい。業務以外の事では使用しませんし、外に漏らす事もありませんので』

相変わらずロボットみたいなしゃべり方するなぁ…。

『お電話しましたのはほかでもありません。先日査問委員会が開かれまして、協議の結果、飯田さんの処分が決まりましたので』

「決まった…んです、か…」

あたしは声が震えているのがわかるくらい、動揺していた。

『それでですね。こういった場合は直接ご本人に支社長から通告致します。つきましては急で申し訳ないですが、明日の午後三時に支社までご足労願えますか?』

明日の…
午後三時に…
M市の支社…

「わかり…ました…。明日伺います…」

泣いても笑っても、明日であたしの出処進退が決まるってわけか…。

あたしは眞子に電話を入れ、今氷メガネから言われた話をした。
眞子は心配してくれたが今さらどうする事も出来ない事もわかっていた。

あたしも自分の運を天に任せるつもりで、明日に臨むしかなかった。