氷メガネは黙って何かを考えているようだったが、結局録音する事を許可してくれた。

「では、お願いします」

あたしは念のため、自分のと氷メガネの携帯の両方で録音してほしいとお願いし、話を始めた。

「先日退職された藤堂マネージャーに言われたんです。契約を取るために、女を使えと。あたしも他の班員も全員、無理だと言って断りました。
それでも一向にひかないマネージャーに嫌気がさして、あたし達は支社長に直談判しました。そしたらその後、藤堂マネージャーが退職されて…。
その辺りからです。嫌がらせまがいの事が始まったのは…」

「嫌がらせ?」

あたしはコンプライアンス違反の件から保険料紛失の件まで、全てが藤堂と所長の陰謀だという話を氷メガネに聞かせた。
氷メガネはジッと黙ってあたしの話を聞いた後、ポツリと言った。

「飯田さん、一連の件が藤堂マネージャーと坂西所長の陰謀だという確たる証拠がありますか?」

証拠…。
それがないからここまで追い詰められたんだ…。

「いえ…。証拠は…ないです…」

「では、全て、あなたと班の皆さんの推測ですね?」

「確かにそうですけど、名刺の件は雲居さんが証人です!あたしが間違いなく引き出しの中から名刺を出したと、覚えていてくれました!それが事実である限り、他の件もすべて事実なんです!」