「そして三時間近くクライアントの店舗で過ごした後、営業所に戻り現金が不足している事に気づいた、そういう事ですね」

「はい…」

「飯田さん。短い期間にここまでたくさんの違反や苦情が出た人は過去にも例を見ません。あなたはこの仕事について、どのようなお考えでいらっしゃるのでしょうか」

それは…
今回の事はあたしが浅はかだった所はあるけど…

仕事に対してはいい加減な気持ちで臨んだ事は一度だってない。

「あたしは…。この仕事に、情熱と誇りを持ってやっています…。人に恥じるような事は、していません…。確かに、今回の保険料については、あたしにも非があるのは認めます…でも!それ以外の事は…ある人の陰謀なんです…」

「陰謀…ですか?」

氷メガネはその瞳をさらに鋭くさせてあたしを見た。
でも、ひるんじゃいけない。
ダメ元で言うしかない…。

でなければこのまま濡れ衣を着せられたまま、辞めなきゃならなくなる…。

「お願いがあります…。今、ここでの会話を、録音して下さい…」

氷メガネは一瞬だけそのハニワのような無表情な顔を崩し、眉間にシワを寄せた。

「それは…。私の事が信用できない、というふうに理解して、宜しいですか?」

「内務次長が信用できないというのではありません…。ここ最近で、あたしや班のみんながやられた事があって…。悲しいけど、周りの人、誰も信用できなくなってしまったんです…」