「それではまず、お名前の確認です。I第一営業所所属の飯田尚美さんで間違いありませんね」

「はい…」

「今回寄せられた苦情の他に、前回のコンプライアンス調査の時に一ペナ課せられています。これは、持ち出しケースの中にクライアントの名刺が入ったままになっていたとの事ですが、間違いありませんか?」

「…はい…」

あたしはいきさつを言うべきかどうか迷っていた。

でも、コイツも奴らと同じ穴のムジナという可能性がある以上、言ったところで意味がないと思い、どうしても言えなかった。

「わかりました。それでは今回の苦情に関する質問を致します。契約時に徴収した第一回保険料について、あなたはその場で確認し、領収をきったにもかかわらず、営業所に戻った際に金額が不足しているのに気づき、クライアントへ疑いの目を向けた。ここまでは、宜しいですか?」

「…はい…」

「それともうひとつ。今回は見直しの転換契約ですがそれとは別件で、以前従業員の方が加入した医療保険について、健康告知が義務付けられているにも関わらず、あなたにその必要はないと言われ告知をしなかったと聞いています」

ちょっと待って…
なんなの、その話…?

「内務次長…。それは、そんな事はしていません…。告知義務違反の教唆は、新人でもわかる重大な違反です。それをあたしがするわけないじゃないですか…?」