そして眞子は宣言通り本社の倫理委員会と労働組合に連絡した。

労働組合の方は働く側の味方だから、調査チームを派遣する所まで話を詰める事ができた。

ようやく解決に向けての糸口ができたと安堵していた時、まさかの連絡によりあたし達の希望はいとも簡単に打ち砕かれた。

それは、本社のコールセンターからの連絡だった。
契約者からの苦情が入ったのだ…。

その苦情はあたし宛てだった。

内容を聞いて、申し立てをしたのはあのエステサロンのオーナーだという事はすぐにわかった。
そしてあたしはこの時初めて、氷メガネと呼ばれる伊藤内務次長に呼び出された。

この時ばかりは眞子をはじめ誰も同席できず、あたし一人で氷メガネと対峙しなければならなかった。

支社に呼ばれたあたしは緊張しながら内務次長室に向かう。
ノックのあと声が聞こえるまでの時間、あたしは緊張で倒れそうだった。

中に入ると、氷メガネが冷たい視線をあたしに送りながら言った。

「面談を始める前に言っておかなければならない事があります。本来ならば、支社長も同席しなければなりませんが、やむを得ない事情により、本日は私一人で行います」

やむを得ない事情だって?
きっと所長のヤツが眞子とのでっち上げ話をしたに違いない。
コイツもあんなゲス野郎を信じているなら、たかが知れてる。

あたしは心の中で唾を吐いた。