「日比谷さん…もしかして…」

あたしが眞子の方を振り返ると同時に眞子もあたしの方を見る。

「所長…」

眞子がつぶやいた。

あの所長ならやりかねない。
藤堂の事をあんなに買っていたし、あたし達に辞めろとまで言ったアイツなら。

支社長が言っていたように、藤堂が辞める事についても相当ゴネていたんだから。

あたし達にもなんらかの制裁を加えろと言ったけど、それが通らなかった。
だから会社が制裁を加えざるを得ない方法を考えたのかもしれない。

恐ろしいヤツだわ…。

「とにかく。うちの班みんな要注意だね…。
でも所長がグルならちょっと大変だわ。
支社長にお願いしておいた方がいいかもしれないね」

眞子はその場で支社長に電話をかける。
少しの間があき、話そうとしていた眞子が無言になった。

そのうち眞子は顔面蒼白になったかと思うと、必死にしゃべり始めた。

「いえ…!違います…!信じて下さい…!支社長とは業務上の…あ…」

ただならぬ雰囲気に、あたしもどうしたのかと焦ってしまう。

電話は相手側から切られたようだった。

「日比谷さん…今のは…?」