久しぶりに来た。このビル。
KK生命保険株式会社。

何年ぶり?約三年ぶりか…?

感慨深げにビルを眺めていると、後ろから声を掛けられた。

尚美(なおみ)さん?」

声の方を振り向くと、以前勤めていた時の後輩、小林美晴(こばやしみはる)が立っていた。

「美晴じゃん。久しぶり」

「ちょっとぉ~、どうしたんですか~?え?もしかして、そのカッコ、また営業やるんですかぁ~?」

相変わらずテンションが高い。
以前もちょっと苦手な子だったんだけど、今でも苦手だな。

だいたい、もうこの子もいい年のはず。
そろそろ落ち着けってーの。

「違うよ。事務の相川(あいかわ)さん、もうすぐ定年でしょ。後任を育てたいって募集出てたのよ。それで今日は面接」

「え~、そうなんですかぁ~。なぁんだ、てっきりまた営業に復活するのかと思いましたよぉ~。でも尚美さんが事務なんて、イメージ合わないな…。あたし絶対、営業がいいと思いますよぉ~」

ったくコイツは…
あたしがどうして営業辞めたのか、その辺の事情も全部知ってるくせによく言うよ。

「もう営業は懲り懲りなんだよね。美晴だって知ってんじゃん。あの女の戦いはどうも性に合わなくてね」

「…でも、藤堂(とうどう)さんはもういないんだし…。時田(ときた)さんとはまだ、連絡取り合ってるんですよね?」

時田とはあたしの親友で、今はマネージャー職についている時田麻美(ときたあさみ)の事だ。