「おい! さっさと歩け!」
4人の男が両手を縛られ縄で繋がれて歩かされている。
先頭で彼達を引っ張っているのはダーシャだ。
最後尾にはリリが立ち、4人を挟む形で行進している。
真魔国と取引をしようとしていたこの4人の男達は戦闘能力が低く、あっさりとダーシャ達に捕まってしまっていた。
標的を捕獲した彼女達だが、まだ安心は出来ていない。もう2人を追っていったウォリー達が心配だった。
「おい! さっきから何モタモタしている!」
「そんな事言ったってよぉ、こう4人繋がれた状態じゃ上手く歩けねえんだって」
急いでウォリー達の元へ駆けつけたいダーシャだったが、捕まえた4人を放置するわけにもいかずこうして引っ張って来ている。
そのせいで思うように前へ進めず、苛立ちが積もっていった。
リリも同じくもどかしそうにしている。
今連れている4人の男達は戦闘力からして真魔国の構成員では無いだろう。
恐らく金儲けの為に真魔国に協力していただけの関係。
しかしもう2人の方は魔人族だった。
彼らは真魔国である可能性が高い。
真魔国の者はどんな攻撃を仕掛けてくるかわからない。
ダーシャ達はもしもウォリーの身に何かあったらと考えると、すぐにでも駆け出したくなる気持ちだった。
「ウォリー、無事でいてくれ……」
木々に囲まれた道の先の闇を見つめ、ダーシャは呟いた。
緑目の男が振った剣は、ウォリーの背中へ向かって下りて行く。
すでに男に痛めつけられて弱っているウォリーにはこれを躱す余裕はない。
剣の刃が背中から肉の中に食い込み、ウォリーの身体を斜めに切り裂く……はずだった。
しかしそうなる前に剣は男の手から弾き飛ばされる。
そのまま剣は頭上を行き、男の背後へ落下した。
男は驚いて目の前を凝視した。
先程自分の目に映った光景が信じられなかった。
手には今もビリビリとした衝撃が残っている。
この手で剣を振るった時、倒れていたハナが光弾を飛ばして握っていた剣を弾き飛ばした。男の目にはそのように見えた。
あり得ない事だった。
ハナは呪いによって死ぬ直前だったのだ。そんな事が出来るはずがない。
男が混乱していると、彼の目にさらに信じられない光景が飛び込んできた。
ハナがゆっくりと立ち上がった。
呪いに生命力を奪われ、死の1歩手前まで行っていたはずのハナが自分の足で立っている。
「な、何で……」
ハナの身体を覆っていた黒い血管のようなものはすっかり消え去っている。
それは呪いが完全に解除された事を意味していた。
「どうなってる!? お前、何で呪いが!!」
理解不能の現象に男は後ずさった。恐怖で額から冷や汗が噴き出してくる。
「お前の失敗は……僕をすぐに殺さなかった事だ……」
倒れたままのウォリーが男を見上げながら言った。
「鬱憤を晴らす事に気を取られ……打開策を考える猶予を僕に与えてしまった……」
「どういう事だ! お前が治したのか!? 解呪の呪文を知らなければ出来ないはずだ!」
ウォリーはゆっくりと男を指差した。
「自分の身体を……よく見てみろ」
そう言われて男はようやく自分の身体の変化に気が付いた。
手の平を触ってみる。
血は付着しているが傷口がすっかり消えている。
男は確かに自分で自分の手を切りつけた。それが呪いを使うための儀式だったのだ。確かにつけたはずの傷跡がいつのまにか無くなっていた。
次に男は頬を触る。
ウォリーに殴られて腫れていたはずの頬の痛みが無くなっている。
「どういう事だ……いつのまにか、俺……回復している?」
「さっき痛めつけられていた時に……僕がお前に回復魔法をかけた……」
「何故だ!? 何故そんな事を!」
男は焦りながら叫んだ。
「傷ついていたお前を“助ける”ためさ。僕はお前を助けた。だからポイントが入ったんだ。僅かに足りなかったポイントが10万に達し、僕はスキルを取得するとが出来た」
「ポイント? スキルを取得? 何わけわかんねぇ事言ってんだ!」
男はウォリーのスキルを知らない。ウォリーの言葉は男をより混乱させるだけだった。
「あんたが理解する必要はないわ!」
ハナが鋭い目で男を睨んだ。
「あんたが今気にする事は、私が復活して今度はあんたの方がピンチだって事よ!」
「ぐっ……くそぉ!」
男は急いで背後に落ちた剣を拾うと、再び自分の手の平を切り裂いた。
「ト・ウジデーレ・デベ……」
「沈黙!!!」
呪文を唱えようとした男だったが、ハナの魔法の方が速かった。
「んっ……んぐ! ……んー! うんんー!!」
相手の口を封じて詠唱を出来なくさせる魔法、『沈黙』
男は顔に力を込めて言葉を発しようとするが、上唇と下唇がぴったりとくっついて離れない。
「ん! んんんー!!!」
ハナは怒りの宿った目で男を見つめている。
「ん! んんんんんー! んんんー!!」
男が必死で何かをハナに伝えようとする。
彼のすがるような目は、命乞いをしているようにも見えた。
喋れない男が何を言いたいのかハナにはわからない。しかし、ハナにはもう男の言葉に耳を傾ける気は無かった。
ウォリーは自分を庇ってこの男に痛めつけられた。
それをずっと見せつけられたのだ。
ミリアの事や、Aランクの事は今はどうでもよかった。
この男はただでは済まさないとハナは決意していた。
「あんたは、許さない……」
4人の男が両手を縛られ縄で繋がれて歩かされている。
先頭で彼達を引っ張っているのはダーシャだ。
最後尾にはリリが立ち、4人を挟む形で行進している。
真魔国と取引をしようとしていたこの4人の男達は戦闘能力が低く、あっさりとダーシャ達に捕まってしまっていた。
標的を捕獲した彼女達だが、まだ安心は出来ていない。もう2人を追っていったウォリー達が心配だった。
「おい! さっきから何モタモタしている!」
「そんな事言ったってよぉ、こう4人繋がれた状態じゃ上手く歩けねえんだって」
急いでウォリー達の元へ駆けつけたいダーシャだったが、捕まえた4人を放置するわけにもいかずこうして引っ張って来ている。
そのせいで思うように前へ進めず、苛立ちが積もっていった。
リリも同じくもどかしそうにしている。
今連れている4人の男達は戦闘力からして真魔国の構成員では無いだろう。
恐らく金儲けの為に真魔国に協力していただけの関係。
しかしもう2人の方は魔人族だった。
彼らは真魔国である可能性が高い。
真魔国の者はどんな攻撃を仕掛けてくるかわからない。
ダーシャ達はもしもウォリーの身に何かあったらと考えると、すぐにでも駆け出したくなる気持ちだった。
「ウォリー、無事でいてくれ……」
木々に囲まれた道の先の闇を見つめ、ダーシャは呟いた。
緑目の男が振った剣は、ウォリーの背中へ向かって下りて行く。
すでに男に痛めつけられて弱っているウォリーにはこれを躱す余裕はない。
剣の刃が背中から肉の中に食い込み、ウォリーの身体を斜めに切り裂く……はずだった。
しかしそうなる前に剣は男の手から弾き飛ばされる。
そのまま剣は頭上を行き、男の背後へ落下した。
男は驚いて目の前を凝視した。
先程自分の目に映った光景が信じられなかった。
手には今もビリビリとした衝撃が残っている。
この手で剣を振るった時、倒れていたハナが光弾を飛ばして握っていた剣を弾き飛ばした。男の目にはそのように見えた。
あり得ない事だった。
ハナは呪いによって死ぬ直前だったのだ。そんな事が出来るはずがない。
男が混乱していると、彼の目にさらに信じられない光景が飛び込んできた。
ハナがゆっくりと立ち上がった。
呪いに生命力を奪われ、死の1歩手前まで行っていたはずのハナが自分の足で立っている。
「な、何で……」
ハナの身体を覆っていた黒い血管のようなものはすっかり消え去っている。
それは呪いが完全に解除された事を意味していた。
「どうなってる!? お前、何で呪いが!!」
理解不能の現象に男は後ずさった。恐怖で額から冷や汗が噴き出してくる。
「お前の失敗は……僕をすぐに殺さなかった事だ……」
倒れたままのウォリーが男を見上げながら言った。
「鬱憤を晴らす事に気を取られ……打開策を考える猶予を僕に与えてしまった……」
「どういう事だ! お前が治したのか!? 解呪の呪文を知らなければ出来ないはずだ!」
ウォリーはゆっくりと男を指差した。
「自分の身体を……よく見てみろ」
そう言われて男はようやく自分の身体の変化に気が付いた。
手の平を触ってみる。
血は付着しているが傷口がすっかり消えている。
男は確かに自分で自分の手を切りつけた。それが呪いを使うための儀式だったのだ。確かにつけたはずの傷跡がいつのまにか無くなっていた。
次に男は頬を触る。
ウォリーに殴られて腫れていたはずの頬の痛みが無くなっている。
「どういう事だ……いつのまにか、俺……回復している?」
「さっき痛めつけられていた時に……僕がお前に回復魔法をかけた……」
「何故だ!? 何故そんな事を!」
男は焦りながら叫んだ。
「傷ついていたお前を“助ける”ためさ。僕はお前を助けた。だからポイントが入ったんだ。僅かに足りなかったポイントが10万に達し、僕はスキルを取得するとが出来た」
「ポイント? スキルを取得? 何わけわかんねぇ事言ってんだ!」
男はウォリーのスキルを知らない。ウォリーの言葉は男をより混乱させるだけだった。
「あんたが理解する必要はないわ!」
ハナが鋭い目で男を睨んだ。
「あんたが今気にする事は、私が復活して今度はあんたの方がピンチだって事よ!」
「ぐっ……くそぉ!」
男は急いで背後に落ちた剣を拾うと、再び自分の手の平を切り裂いた。
「ト・ウジデーレ・デベ……」
「沈黙!!!」
呪文を唱えようとした男だったが、ハナの魔法の方が速かった。
「んっ……んぐ! ……んー! うんんー!!」
相手の口を封じて詠唱を出来なくさせる魔法、『沈黙』
男は顔に力を込めて言葉を発しようとするが、上唇と下唇がぴったりとくっついて離れない。
「ん! んんんー!!!」
ハナは怒りの宿った目で男を見つめている。
「ん! んんんんんー! んんんー!!」
男が必死で何かをハナに伝えようとする。
彼のすがるような目は、命乞いをしているようにも見えた。
喋れない男が何を言いたいのかハナにはわからない。しかし、ハナにはもう男の言葉に耳を傾ける気は無かった。
ウォリーは自分を庇ってこの男に痛めつけられた。
それをずっと見せつけられたのだ。
ミリアの事や、Aランクの事は今はどうでもよかった。
この男はただでは済まさないとハナは決意していた。
「あんたは、許さない……」