「助かるよ。危険な依頼だが何とか成功させてくれ」
ギルド長はウォリー達の返答を聞き深く頷いた。
「ところで、この取引というのは一体どういうものなんですか?」
「うむ、情報によれば闇の魔石の取引らしい」
魔石は魔力を帯びている特殊な石だ。火の魔石、水の魔石など帯びている魔力の属性は多様だ。
武器などに埋め込めば魔法を得意としない者でも魔法攻撃が使えるようになれる他、日常生活においても役に立っている。
例えば氷の魔石と食料を一緒に保管しておけば冷凍保存が出来るし、火属性魔法が使えない者でも火の魔石を持っていれば野外で火を起こして調理が出来たりする。
「邪神というものを知っているか?」
「邪神……確か、昔魔国が戦争の際に使用していた生物兵器」
「そう、我が国と隣国が力を合わせてようやく封印する事が出来たという恐ろしい兵器だ。真魔国の狙いの1つがこの邪神だと言われている」
その場に緊張が走った。魔国との戦争はウォリー達が生まれる前の話だが、邪神の恐ろしさはこの国の歴史として今も語り継がれている。
「邪神の封印を解くためには大量の闇の魔石を必要とするらしい。今回の取引はその為の魔石集めだと思われる」
「もし、奴らが邪神を手にしたら……」
しばらくの沈黙の後、ギルド長が呟いた。
「戦争も起こり得る……」
ウォリー達は改めてこの依頼の重要さを感じた。真魔国に魔石を渡さない為に、この依頼は必ず成功させなければならない。
「ところでウォリー君とハナ君は元々Aランクパーティのレビヤタン出身だったね?」
「はい、そうですが」
「ならばある程度戦闘の経験はあるのだろうが、くれぐれも油断はしない事だ。奴らはそこら辺の盗賊とは訳が違う。何やら怪しい禁術にも手を出しているようなんでね。慎重に行かないと思わぬ反撃を食らうことになるかもしれん」
「はい。肝に銘じておきます」
取引が行われるとされる日が訪れた。
時刻は深夜。周囲は暗く、多くの人が眠りについている時間だ。
そこは街から少し離れた所にある林の中だった。
ウォリー達は知らされていた場所の付近に身を潜めて隠れている。
取引予定の場所に近づきすぎず、離れ過ぎず、息を殺してその時が来るのをじっと待っていた。
やがて、4人の人影が歩いてくるのが見えた。
4人は大きな箱を2つ運んでいる。
ウォリー達は緊張しながら草木の陰でじっと観察した。もし情報が正しければ、箱の中身は魔石のはずだ。
少し後から、さらに2人の男が現れる。
彼らからは紫色の肌と角が確認できた。魔人族だ。
「確認させてもらう」
2人の魔人族のうちの1人が箱を調べ始めた。
「いや、待て」
もう片方の魔人族の男が言った。
その男は辺りをキョロキョロと見回し始める。
やがてその目はウォリー達がいる方向に向けられた。
緑色に光る不気味な目だった。それがウォリーをじっと見つめていた。
(気付かれた!? 馬鹿な、この距離から……!? 物音ひとつ立ててないのに)
ウォリーの背筋が凍った。
「4人潜んでる! 逃げろ!」
緑の目の魔人族が叫んだ。その男はなぜかウォリー達の人数まで把握していた。
男達は最初に来た4人と、後から来た2人とに分かれて別々の方向へ走り出した。
慌ててウォリー達も走り出す。
「僕とハナは2人を追う! ダーシャ達は4人の方を!」
「わかった!」
ウォリーは瞬時に指示を出して二手に分かれた。
林の中を駆けていく2人の人影を必死で追う。
あの場にいた6人の中で今目の前を行く男、自分達の潜伏を見破ったあの男が最も危険だとウォリーは感じ取っていた。
「ファイアボール!」
ハナが走りながら魔法で火球を飛ばした。
「うわっ!」
火球は男達に命中しそうになったが、ギリギリの所で躱されてしまった。
しかし、それによって男の足は一時的に止まった。
ウォリー達は一気に男達との距離を詰めて行く。
「逃げ切るのは無理か……」
緑の目の魔人族はそうつぶやくと、身を返してウォリー達の方を向いた。
彼は剣を抜いて待ち構えている。応戦するつもりらしい。
「シャドウカッター!」
もう片方の男が魔法を発動させた。
真っ黒な刃がいくつもウォリー達に向かって飛んで行った。
「くっ!」
ハナは光弾を放ち刃を一つ一つ撃ち落としていく。
しかし、黒い刃は周囲の暗闇に溶け込み見えにくい。
ハナは1つだけ飛んでくる刃を見落としてしまった。刃はハナの太ももに命中し、肉を切り裂いた。
「あぐっ!」
「回復マン!」
すぐにウォリーが回復する。
一瞬にしてハナの傷口が塞がり完治した。
「げっ! あの男ヒーラーか!?」
「なるほど……」
緑の目の魔人族はニヤリと笑った。
ギルド長はウォリー達の返答を聞き深く頷いた。
「ところで、この取引というのは一体どういうものなんですか?」
「うむ、情報によれば闇の魔石の取引らしい」
魔石は魔力を帯びている特殊な石だ。火の魔石、水の魔石など帯びている魔力の属性は多様だ。
武器などに埋め込めば魔法を得意としない者でも魔法攻撃が使えるようになれる他、日常生活においても役に立っている。
例えば氷の魔石と食料を一緒に保管しておけば冷凍保存が出来るし、火属性魔法が使えない者でも火の魔石を持っていれば野外で火を起こして調理が出来たりする。
「邪神というものを知っているか?」
「邪神……確か、昔魔国が戦争の際に使用していた生物兵器」
「そう、我が国と隣国が力を合わせてようやく封印する事が出来たという恐ろしい兵器だ。真魔国の狙いの1つがこの邪神だと言われている」
その場に緊張が走った。魔国との戦争はウォリー達が生まれる前の話だが、邪神の恐ろしさはこの国の歴史として今も語り継がれている。
「邪神の封印を解くためには大量の闇の魔石を必要とするらしい。今回の取引はその為の魔石集めだと思われる」
「もし、奴らが邪神を手にしたら……」
しばらくの沈黙の後、ギルド長が呟いた。
「戦争も起こり得る……」
ウォリー達は改めてこの依頼の重要さを感じた。真魔国に魔石を渡さない為に、この依頼は必ず成功させなければならない。
「ところでウォリー君とハナ君は元々Aランクパーティのレビヤタン出身だったね?」
「はい、そうですが」
「ならばある程度戦闘の経験はあるのだろうが、くれぐれも油断はしない事だ。奴らはそこら辺の盗賊とは訳が違う。何やら怪しい禁術にも手を出しているようなんでね。慎重に行かないと思わぬ反撃を食らうことになるかもしれん」
「はい。肝に銘じておきます」
取引が行われるとされる日が訪れた。
時刻は深夜。周囲は暗く、多くの人が眠りについている時間だ。
そこは街から少し離れた所にある林の中だった。
ウォリー達は知らされていた場所の付近に身を潜めて隠れている。
取引予定の場所に近づきすぎず、離れ過ぎず、息を殺してその時が来るのをじっと待っていた。
やがて、4人の人影が歩いてくるのが見えた。
4人は大きな箱を2つ運んでいる。
ウォリー達は緊張しながら草木の陰でじっと観察した。もし情報が正しければ、箱の中身は魔石のはずだ。
少し後から、さらに2人の男が現れる。
彼らからは紫色の肌と角が確認できた。魔人族だ。
「確認させてもらう」
2人の魔人族のうちの1人が箱を調べ始めた。
「いや、待て」
もう片方の魔人族の男が言った。
その男は辺りをキョロキョロと見回し始める。
やがてその目はウォリー達がいる方向に向けられた。
緑色に光る不気味な目だった。それがウォリーをじっと見つめていた。
(気付かれた!? 馬鹿な、この距離から……!? 物音ひとつ立ててないのに)
ウォリーの背筋が凍った。
「4人潜んでる! 逃げろ!」
緑の目の魔人族が叫んだ。その男はなぜかウォリー達の人数まで把握していた。
男達は最初に来た4人と、後から来た2人とに分かれて別々の方向へ走り出した。
慌ててウォリー達も走り出す。
「僕とハナは2人を追う! ダーシャ達は4人の方を!」
「わかった!」
ウォリーは瞬時に指示を出して二手に分かれた。
林の中を駆けていく2人の人影を必死で追う。
あの場にいた6人の中で今目の前を行く男、自分達の潜伏を見破ったあの男が最も危険だとウォリーは感じ取っていた。
「ファイアボール!」
ハナが走りながら魔法で火球を飛ばした。
「うわっ!」
火球は男達に命中しそうになったが、ギリギリの所で躱されてしまった。
しかし、それによって男の足は一時的に止まった。
ウォリー達は一気に男達との距離を詰めて行く。
「逃げ切るのは無理か……」
緑の目の魔人族はそうつぶやくと、身を返してウォリー達の方を向いた。
彼は剣を抜いて待ち構えている。応戦するつもりらしい。
「シャドウカッター!」
もう片方の男が魔法を発動させた。
真っ黒な刃がいくつもウォリー達に向かって飛んで行った。
「くっ!」
ハナは光弾を放ち刃を一つ一つ撃ち落としていく。
しかし、黒い刃は周囲の暗闇に溶け込み見えにくい。
ハナは1つだけ飛んでくる刃を見落としてしまった。刃はハナの太ももに命中し、肉を切り裂いた。
「あぐっ!」
「回復マン!」
すぐにウォリーが回復する。
一瞬にしてハナの傷口が塞がり完治した。
「げっ! あの男ヒーラーか!?」
「なるほど……」
緑の目の魔人族はニヤリと笑った。