「店を、閉める……?」
ハナが目を見開いた。
「お祭りで優勝すれば賞金が貰えるんです。それに、お店の知名度も上がってお客さんも増えると思います。泥棒にお金と貴重な豆を盗られてこのお店の経営は今もギリギリの状態なんです。だから、お祭りで優勝する事が私達の最後の希望だったんです」
「このお店はあなた達2人だけで経営してるの?」
「はい。私達姉妹は孤児院で育ちました。それから2人で働いて、お金を貯めてこの店を始めました」
コピの言葉を聞き、ハナは俯いて考え込み始めた。
「やっぱり何とかしてあげましょうよ」
リリがハナに向かって訴えかける。
ハナはしばらく黙り込んでいたが、やがて大きくため息をついた。
「駄目よ、少なくともさっきの皮袋の中身の3倍は頂かないとね」
ハナがそう言い放つと、コピとルアクは耳をぺたんと寝かせてうなだれた。
「でも……」
ハナはそう言って続けた。
「足りない分はこの店への投資、という事にするのなら受けてもいいわ」
それを聞いて2人はぱっと顔を上げた。
「ほ、本当ですか!?」
「ええ、その代わりお祭りでは絶対に優勝しなさいよ。あなた達へ出資する以上、店に潰れてもらっちゃ困るんだから」
「はい! ありがとうございます!」
2人はハナに向かって何度も頭を下げた。
「なんだ、ハナも意外といいとこあるじゃないか」
ダーシャがそう言って笑う。
「別に、これはただのビジネスよ。お店が儲かったらちゃんと報酬は貰うんだからね」
ウォリーも安心して胸をなでおろした。
ちょうどその時、店の入り口が開き客が1人入ってきた。
見れば、あのサングラスの女だった。
「いらっしゃいませ〜」
ルアクが出迎えに行く。
先程ハナから良い返事を貰ったせいか、その声は上機嫌だった。
「ご注文はお決まりですか……ん?」
テーブルに座った女の前で、ルアクは首を傾げた。
「あれ? ……くんくん……」
ルアクは自分の鼻をひくひくと動かしている。先程まで上機嫌だった彼女の顔が、どんどん険しくなっていった。
「すいません。あなたの荷物、見せてもらっていいですか?」
「はぁ? なんだい急に」
突然の事にサングラスの女は嫌そうな表情になった。
「いいから見せてください!」
ルアクは強引に女の鞄に手を突っ込んだ。
「ちょっと! 何すんだい!」
やがて、ルアクは鞄の中から何かが詰まった紙袋を取り出した。
「ちょっと! どういうつもりだい! 返しな!」
怒りだす女を無視してルアクは紙袋の中身を確認した。彼女は一瞬驚いた表情をすると、大声でコピに声をかけた。
「コピ! 見てこれ!」
コピが駆け寄って袋の中身を確認すると、彼女はギョッとしてサングラスの女を見つめた。
紙袋の中には大量のコーヒー豆が詰まっていた。
「この香り、間違いない。コフィアフォレだよ」
「まさか、あなたがウチから豆を盗んでたんですか!?」
コピとルアクは2人して女に詰め寄った。
「なんだいあんた達! コーヒー豆持ってたからってそれが盗品とは限らないじゃないかい!」
「だったらどうやってこの豆を手に入れたんですか! このコーヒー豆はモンスターが出る危険地帯でしか採れないものです。そう簡単に手に入るものではありません!」
「あなたの方から豆の香りがしたからおかしいと思ったんです! 私達獣人族は普通の人間よりも嗅覚が発達しているんです」
女は立ち上がると、紙袋をルアクからふんだくった。
「客を泥棒扱いするとは、なんて店だい!」
女はサングラス越しに怒りの表情を浮かべ、速足で店の外へ出て行ってしまった。
「コピ! 追っかけよ!」
「2人とも待ってください!」
ウォリーが慌てて声をかけた。
「豆を持っていたからって、泥棒だという証拠にはならないですよ」
「でも、どう考えてもおかしいですよ! あの人ずっと怪しい雰囲気で毎日店に来てましたし、今まで盗む機会を窺っていたのかも」
「だとしても証拠が無いうちは捕まえることは出来ません」
「うう……」
「盗まれた分の豆は、皆で山に行って採って来ましょうよ。ほら、僕のパーティも協力してくれるって事になったわけですし」
そう言って微笑むウォリーに、2人は渋々頷いた。
「祭りはもうすぐだし、出発するのは早い方がいいですよね? 明日にでも採りに行くって事でいいですか?」
「はい。よろしくお願いします!」
ポセイドンのメンバーの4人は席を立ち上がった。
「じゃあ僕達も準備がありますので、これで」
「はい! 本当に、ありがとうございました!」
コピとルアクは再び深々とお辞儀をした。
すると、ハナが2人に歩み寄って行き財布を取り出した。
「いくら?」
「……はい?」
意味がわからず2人はぽかんと固まった。
「コーヒー代よ、いくら?」
「え、いやいや、お代は結構ですと……」
ハナはペシっと軽めにコピの頭を叩いた。
「ふにゃ!?」
「馬鹿、そういうのは祭りで優勝して儲けてから言いなさい」
ハナが目を見開いた。
「お祭りで優勝すれば賞金が貰えるんです。それに、お店の知名度も上がってお客さんも増えると思います。泥棒にお金と貴重な豆を盗られてこのお店の経営は今もギリギリの状態なんです。だから、お祭りで優勝する事が私達の最後の希望だったんです」
「このお店はあなた達2人だけで経営してるの?」
「はい。私達姉妹は孤児院で育ちました。それから2人で働いて、お金を貯めてこの店を始めました」
コピの言葉を聞き、ハナは俯いて考え込み始めた。
「やっぱり何とかしてあげましょうよ」
リリがハナに向かって訴えかける。
ハナはしばらく黙り込んでいたが、やがて大きくため息をついた。
「駄目よ、少なくともさっきの皮袋の中身の3倍は頂かないとね」
ハナがそう言い放つと、コピとルアクは耳をぺたんと寝かせてうなだれた。
「でも……」
ハナはそう言って続けた。
「足りない分はこの店への投資、という事にするのなら受けてもいいわ」
それを聞いて2人はぱっと顔を上げた。
「ほ、本当ですか!?」
「ええ、その代わりお祭りでは絶対に優勝しなさいよ。あなた達へ出資する以上、店に潰れてもらっちゃ困るんだから」
「はい! ありがとうございます!」
2人はハナに向かって何度も頭を下げた。
「なんだ、ハナも意外といいとこあるじゃないか」
ダーシャがそう言って笑う。
「別に、これはただのビジネスよ。お店が儲かったらちゃんと報酬は貰うんだからね」
ウォリーも安心して胸をなでおろした。
ちょうどその時、店の入り口が開き客が1人入ってきた。
見れば、あのサングラスの女だった。
「いらっしゃいませ〜」
ルアクが出迎えに行く。
先程ハナから良い返事を貰ったせいか、その声は上機嫌だった。
「ご注文はお決まりですか……ん?」
テーブルに座った女の前で、ルアクは首を傾げた。
「あれ? ……くんくん……」
ルアクは自分の鼻をひくひくと動かしている。先程まで上機嫌だった彼女の顔が、どんどん険しくなっていった。
「すいません。あなたの荷物、見せてもらっていいですか?」
「はぁ? なんだい急に」
突然の事にサングラスの女は嫌そうな表情になった。
「いいから見せてください!」
ルアクは強引に女の鞄に手を突っ込んだ。
「ちょっと! 何すんだい!」
やがて、ルアクは鞄の中から何かが詰まった紙袋を取り出した。
「ちょっと! どういうつもりだい! 返しな!」
怒りだす女を無視してルアクは紙袋の中身を確認した。彼女は一瞬驚いた表情をすると、大声でコピに声をかけた。
「コピ! 見てこれ!」
コピが駆け寄って袋の中身を確認すると、彼女はギョッとしてサングラスの女を見つめた。
紙袋の中には大量のコーヒー豆が詰まっていた。
「この香り、間違いない。コフィアフォレだよ」
「まさか、あなたがウチから豆を盗んでたんですか!?」
コピとルアクは2人して女に詰め寄った。
「なんだいあんた達! コーヒー豆持ってたからってそれが盗品とは限らないじゃないかい!」
「だったらどうやってこの豆を手に入れたんですか! このコーヒー豆はモンスターが出る危険地帯でしか採れないものです。そう簡単に手に入るものではありません!」
「あなたの方から豆の香りがしたからおかしいと思ったんです! 私達獣人族は普通の人間よりも嗅覚が発達しているんです」
女は立ち上がると、紙袋をルアクからふんだくった。
「客を泥棒扱いするとは、なんて店だい!」
女はサングラス越しに怒りの表情を浮かべ、速足で店の外へ出て行ってしまった。
「コピ! 追っかけよ!」
「2人とも待ってください!」
ウォリーが慌てて声をかけた。
「豆を持っていたからって、泥棒だという証拠にはならないですよ」
「でも、どう考えてもおかしいですよ! あの人ずっと怪しい雰囲気で毎日店に来てましたし、今まで盗む機会を窺っていたのかも」
「だとしても証拠が無いうちは捕まえることは出来ません」
「うう……」
「盗まれた分の豆は、皆で山に行って採って来ましょうよ。ほら、僕のパーティも協力してくれるって事になったわけですし」
そう言って微笑むウォリーに、2人は渋々頷いた。
「祭りはもうすぐだし、出発するのは早い方がいいですよね? 明日にでも採りに行くって事でいいですか?」
「はい。よろしくお願いします!」
ポセイドンのメンバーの4人は席を立ち上がった。
「じゃあ僕達も準備がありますので、これで」
「はい! 本当に、ありがとうございました!」
コピとルアクは再び深々とお辞儀をした。
すると、ハナが2人に歩み寄って行き財布を取り出した。
「いくら?」
「……はい?」
意味がわからず2人はぽかんと固まった。
「コーヒー代よ、いくら?」
「え、いやいや、お代は結構ですと……」
ハナはペシっと軽めにコピの頭を叩いた。
「ふにゃ!?」
「馬鹿、そういうのは祭りで優勝して儲けてから言いなさい」