──話は少し遡り、魔狼フェーンが突如爆発しウードが吹き飛ばされ意識を失った時の事。
その時、クレスとレイラも例外なく吹き飛ばされていた。
だがしかし、クレスの魔法のおかげで二人とも重症をなんとか逃れる事に成功したのだった。
「お父さんっ!?」
「ウードさん!!」
二人は空中に『飛翔』していた。
クレスがレイラにも魔法を掛けたからだ。
敵である魔人も同じく空中にいる。
ローブは殆ど燃え尽きていて、肌を露出させていた。
その体はとても青白くまるで亡霊のようだ。
顔部分の黒い髑髏がその異様さを際立たせている。
「ああっ、お父さんがっ!」
下を見ると、ウードが吹き飛ばされ地面に血溜まりが出来る程の怪我を負ったようだ。
マリアは離れていたおかげか、爆風に煽られただけでなんとか無事の様子。
クレスが取り乱し、魔力が不安定になりかけている。
それを見てレイラは、あの時のことを思い出していた。
マリアがオーガに襲われ、身を挺すも自分が気を失い結果的には仲間達を危険に晒した。
勿論クレス達は誰一人そんな風に思っていなかった。
それがわかっていても、レイラは未だに自分を許してはいなかった。
(わたしは、また皆を危険な目に遭わせるの?…嫌だ!絶対に同じ事はしない!熱くなりすぎるな。冷静に、確実に行動しなさいレイラ!)
そう、自分に言い聞かせて、沸騰しそうになる頭を冷却させる。
冷静さを取り戻したレイラは、まずウードの治療が先だと判断した。
「クレス!レイラ大丈夫!?」
「マリア、私達は大丈夫!すぐにウードさんの治療をして!ウードさんが生きてれば何とでもなるわ!」
三人はヘルメスがウードの魔力を消費して『治癒』のチカラを使う事を知っている。
だから、ウードさえ無事なら死なない限りはなんとかなると理解していた。
しかし、だからといってそれを前提に無茶をする者などウード自身くらいなものだった。
だがこういう時のレイラは、そういう割り切りが出来る肝を持っていた。
「…わかったわ!レイラ、クレスを頼みましたわよ!」
「分かってるっ!」
レイラに言われて、マリアは直ぐにウードの下に走り寄っていった。
マリアもまた仲間の為に必死の表情だ。
しかし、そんな遣り取りを黙って見ているわけ無い者がそこにいる。
「ほう…、そこの男は貴様の父親なのか?だが、あの者はこの地方の者ではないか。…そうなると、貴様は混血か?それでは、偶々あの一族の血を濃く持って産まれただけということか…?」
一人でブツブツと、独り言のように呟く。
そして最後には、クックックと愉快そうな笑い声を上げていた。
「何を…、一体何を言ってるの?!お父さんをあんな目に遭わせて、何が楽しいの?!」
普段穏やかで、明るく聡明で活発な少女であるクレス。
しかし、今は目を釣り上げ、見たことないくらい怒りを顕にしている。
「楽しい?まさかですよ。私はね、腹を立てているんですよ!お前のような半端な者に一瞬でも怯んでしまった事にね。そして…そんな勘違いをさせているお前の存在にだっ!」
そう言うと、黒い矢を放つ魔法を放ってきた。
禍々しいソレを直接触れてはいけないと直感し、クレスは銀色を纏った剣で切り払った。
「そう、それだっ!そのチカラをなぜお前が使うっ!?忌々しい!…そうだ、私の味わった屈辱を、あの父親の命で雪ぐとしよう!!」
そして魔人は、狙いをクレスからウードとマリアに変えた。
先ほどよりも大きく禍々しい黒い矢を創り出し、下にいる二人に狙いつけようとする。
「そんな事は、私が許さないいいいっ!」
クレスが激昂し、叫ぶ。
一瞬我を忘れ、銀のチカラを纏わずにそのまま突進しようとして、しかし何かに遮られた。
「わたしが、そんな事をさせるわけないでしょ?」
クレスを踏み台にして更に高く跳ぶと、ドオオンッと爆破魔法を一発撃ち込む。
さらにそれを目くらましにして、魔人の頭上から剣で無数に斬り付けた。
「あんたも一回、地に這いつくばってみなよ!『高速剣』!!」
「ぐおおおっ!貴様みたいな小娘にいいいいっ!」
魔人は右手に持つ槍で防ごうとするが、レイラの手数が多すぎて捌ききれない。
空中から繰り出した剣技だったため、いつもよりも威力が落ちているがその速度は変わっていない。
接近戦を得意としていないこの魔人には、絶大な効果を発揮した。
「クレス!今よ!」
『飛翔』が切れて落ちていくレイラは、クレスに合図を送る。
それを見たクレスは、ハッと我に返った。
「分かってるよ!食らえええっ、『電撃』!」
「ぬうっ、ぐおおおおお!?」
すぐさま魔人に向けて魔法を撃ち出す。
この高威力の魔法により、魔人の体を灼く。
「『爆破』!…だあああああああっ!『爆炎高速剣』」
レイラはなんと下に向けて爆破魔法を撃ち出し、その反動で再び浮き上がった。
さらにその勢いのままに、自身の最高剣技を魔人に撃ちこむのだった。
「がああああっアガガガっ!!」
もはや声にもならない、悲鳴のような呻き声をあげ、爆炎で更に灼かれながら空へ打ち上げられた魔人。
そして、それを待ち構えるのは当然…。
「…退魔の光よ、悪意を打ち消せ!『銀の制裁《シルバーサンクティオ》ッ』!!
クレスは空中で銀のチカラを発動させた。
その体から眩いばかりに眩い光を放ち、金色の瞳はより輝きを増している。
そこから放たれる銀のチカラは、いままでで一番強く、清らかな光を放った。
「なぜだっ!?この光は本物のチカラ!お前はもしや、王家の─────」
魔人の右手から、持っていた槍がスルリと地面に落ちていく。
クレスが放った銀のチカラに飲み込まれた魔人は、そのまま塵と化したのだった。
クレスもレイラもそこで魔力がほぼ尽きてしまう。
二人は『飛翔』の効果を解除し、地上に降り立った。
しかし、まだ終わったわけではない。
下にはあの魔狼が暴れまわっているからだ。
二人が魔人と戦っている間に近くから応援で駆けつけてきた冒険者が、戦っている。
しかし決定打になる攻撃を出来ないばかりか、その強力な攻撃や魔狼の体に巻き付き蠢く瘴気による攻撃で次々に倒されている。
「な、なんて化け物なんだ!」
「流石、元守り神だけはあるな…」
「うわっちぃっ、黒いのに熱いぞこのモモヤモヤ!」
中にはまだ余裕がありそうな気もする人がいるけど、それも時間の問題だろう。
二人は、そこに加勢に入ろうとした。
グウウオオオオオオオオオオオオンンッ!!
再び咆哮を上げる魔狼フェーン。
それだけで、周りにいる冒険者達も見動けが取れない。
そこを狙って、瘴気を鞭のようにしならせて倒れる冒険者に打ち付けようとする。
「危ない!」
「やらせないよ!」
レイラとクレスは、冒険者達をかばう様にその前に立ちはだかる。
凄まじい勢いで襲ってくる瘴気の鞭を剣で捌くが、その数と速さに次第に捌ききれなくなる。
1か所、また1か所と体に傷を増やしていく二人。
ついには防ぎきれなくなり、最後には薙ぎ払われて吹き飛ばされてしまった。
「「きゃあああああっっ!」」
悲鳴を上げて空を舞う二人。
まともに受け身を取る事も出来ずに、そのまま地面に打ち付けられた。
落ちた衝撃で体にかなりのダメージを受けたが、それでも立ち上がろうとする二人。
「…わたしが負けてられないのよ!」
レイラが吼える。
「お父さんを、みんなを私達で助けるの!」
クレスが叫ぶ。
(早く!早く起きてウードさん!)
マリアは必至に治療をする。
『いつまで寝ておるんじゃ、お主は。そのまま逝かれては我も困るのだ─』
ヘルメスもウードに『治癒』を掛けているのだった。
そして…。
「う…、お花畑が見える・・・、このまま寝たい」
ガコッ!
『何を勝手に旅立とうとしているのだ?安心せい、今お主の『治癒』が終わったぞ』
ウードは、なんとか復活するのだった。
「あれ。俺、今死に掛けたか?」
その時、クレスとレイラも例外なく吹き飛ばされていた。
だがしかし、クレスの魔法のおかげで二人とも重症をなんとか逃れる事に成功したのだった。
「お父さんっ!?」
「ウードさん!!」
二人は空中に『飛翔』していた。
クレスがレイラにも魔法を掛けたからだ。
敵である魔人も同じく空中にいる。
ローブは殆ど燃え尽きていて、肌を露出させていた。
その体はとても青白くまるで亡霊のようだ。
顔部分の黒い髑髏がその異様さを際立たせている。
「ああっ、お父さんがっ!」
下を見ると、ウードが吹き飛ばされ地面に血溜まりが出来る程の怪我を負ったようだ。
マリアは離れていたおかげか、爆風に煽られただけでなんとか無事の様子。
クレスが取り乱し、魔力が不安定になりかけている。
それを見てレイラは、あの時のことを思い出していた。
マリアがオーガに襲われ、身を挺すも自分が気を失い結果的には仲間達を危険に晒した。
勿論クレス達は誰一人そんな風に思っていなかった。
それがわかっていても、レイラは未だに自分を許してはいなかった。
(わたしは、また皆を危険な目に遭わせるの?…嫌だ!絶対に同じ事はしない!熱くなりすぎるな。冷静に、確実に行動しなさいレイラ!)
そう、自分に言い聞かせて、沸騰しそうになる頭を冷却させる。
冷静さを取り戻したレイラは、まずウードの治療が先だと判断した。
「クレス!レイラ大丈夫!?」
「マリア、私達は大丈夫!すぐにウードさんの治療をして!ウードさんが生きてれば何とでもなるわ!」
三人はヘルメスがウードの魔力を消費して『治癒』のチカラを使う事を知っている。
だから、ウードさえ無事なら死なない限りはなんとかなると理解していた。
しかし、だからといってそれを前提に無茶をする者などウード自身くらいなものだった。
だがこういう時のレイラは、そういう割り切りが出来る肝を持っていた。
「…わかったわ!レイラ、クレスを頼みましたわよ!」
「分かってるっ!」
レイラに言われて、マリアは直ぐにウードの下に走り寄っていった。
マリアもまた仲間の為に必死の表情だ。
しかし、そんな遣り取りを黙って見ているわけ無い者がそこにいる。
「ほう…、そこの男は貴様の父親なのか?だが、あの者はこの地方の者ではないか。…そうなると、貴様は混血か?それでは、偶々あの一族の血を濃く持って産まれただけということか…?」
一人でブツブツと、独り言のように呟く。
そして最後には、クックックと愉快そうな笑い声を上げていた。
「何を…、一体何を言ってるの?!お父さんをあんな目に遭わせて、何が楽しいの?!」
普段穏やかで、明るく聡明で活発な少女であるクレス。
しかし、今は目を釣り上げ、見たことないくらい怒りを顕にしている。
「楽しい?まさかですよ。私はね、腹を立てているんですよ!お前のような半端な者に一瞬でも怯んでしまった事にね。そして…そんな勘違いをさせているお前の存在にだっ!」
そう言うと、黒い矢を放つ魔法を放ってきた。
禍々しいソレを直接触れてはいけないと直感し、クレスは銀色を纏った剣で切り払った。
「そう、それだっ!そのチカラをなぜお前が使うっ!?忌々しい!…そうだ、私の味わった屈辱を、あの父親の命で雪ぐとしよう!!」
そして魔人は、狙いをクレスからウードとマリアに変えた。
先ほどよりも大きく禍々しい黒い矢を創り出し、下にいる二人に狙いつけようとする。
「そんな事は、私が許さないいいいっ!」
クレスが激昂し、叫ぶ。
一瞬我を忘れ、銀のチカラを纏わずにそのまま突進しようとして、しかし何かに遮られた。
「わたしが、そんな事をさせるわけないでしょ?」
クレスを踏み台にして更に高く跳ぶと、ドオオンッと爆破魔法を一発撃ち込む。
さらにそれを目くらましにして、魔人の頭上から剣で無数に斬り付けた。
「あんたも一回、地に這いつくばってみなよ!『高速剣』!!」
「ぐおおおっ!貴様みたいな小娘にいいいいっ!」
魔人は右手に持つ槍で防ごうとするが、レイラの手数が多すぎて捌ききれない。
空中から繰り出した剣技だったため、いつもよりも威力が落ちているがその速度は変わっていない。
接近戦を得意としていないこの魔人には、絶大な効果を発揮した。
「クレス!今よ!」
『飛翔』が切れて落ちていくレイラは、クレスに合図を送る。
それを見たクレスは、ハッと我に返った。
「分かってるよ!食らえええっ、『電撃』!」
「ぬうっ、ぐおおおおお!?」
すぐさま魔人に向けて魔法を撃ち出す。
この高威力の魔法により、魔人の体を灼く。
「『爆破』!…だあああああああっ!『爆炎高速剣』」
レイラはなんと下に向けて爆破魔法を撃ち出し、その反動で再び浮き上がった。
さらにその勢いのままに、自身の最高剣技を魔人に撃ちこむのだった。
「がああああっアガガガっ!!」
もはや声にもならない、悲鳴のような呻き声をあげ、爆炎で更に灼かれながら空へ打ち上げられた魔人。
そして、それを待ち構えるのは当然…。
「…退魔の光よ、悪意を打ち消せ!『銀の制裁《シルバーサンクティオ》ッ』!!
クレスは空中で銀のチカラを発動させた。
その体から眩いばかりに眩い光を放ち、金色の瞳はより輝きを増している。
そこから放たれる銀のチカラは、いままでで一番強く、清らかな光を放った。
「なぜだっ!?この光は本物のチカラ!お前はもしや、王家の─────」
魔人の右手から、持っていた槍がスルリと地面に落ちていく。
クレスが放った銀のチカラに飲み込まれた魔人は、そのまま塵と化したのだった。
クレスもレイラもそこで魔力がほぼ尽きてしまう。
二人は『飛翔』の効果を解除し、地上に降り立った。
しかし、まだ終わったわけではない。
下にはあの魔狼が暴れまわっているからだ。
二人が魔人と戦っている間に近くから応援で駆けつけてきた冒険者が、戦っている。
しかし決定打になる攻撃を出来ないばかりか、その強力な攻撃や魔狼の体に巻き付き蠢く瘴気による攻撃で次々に倒されている。
「な、なんて化け物なんだ!」
「流石、元守り神だけはあるな…」
「うわっちぃっ、黒いのに熱いぞこのモモヤモヤ!」
中にはまだ余裕がありそうな気もする人がいるけど、それも時間の問題だろう。
二人は、そこに加勢に入ろうとした。
グウウオオオオオオオオオオオオンンッ!!
再び咆哮を上げる魔狼フェーン。
それだけで、周りにいる冒険者達も見動けが取れない。
そこを狙って、瘴気を鞭のようにしならせて倒れる冒険者に打ち付けようとする。
「危ない!」
「やらせないよ!」
レイラとクレスは、冒険者達をかばう様にその前に立ちはだかる。
凄まじい勢いで襲ってくる瘴気の鞭を剣で捌くが、その数と速さに次第に捌ききれなくなる。
1か所、また1か所と体に傷を増やしていく二人。
ついには防ぎきれなくなり、最後には薙ぎ払われて吹き飛ばされてしまった。
「「きゃあああああっっ!」」
悲鳴を上げて空を舞う二人。
まともに受け身を取る事も出来ずに、そのまま地面に打ち付けられた。
落ちた衝撃で体にかなりのダメージを受けたが、それでも立ち上がろうとする二人。
「…わたしが負けてられないのよ!」
レイラが吼える。
「お父さんを、みんなを私達で助けるの!」
クレスが叫ぶ。
(早く!早く起きてウードさん!)
マリアは必至に治療をする。
『いつまで寝ておるんじゃ、お主は。そのまま逝かれては我も困るのだ─』
ヘルメスもウードに『治癒』を掛けているのだった。
そして…。
「う…、お花畑が見える・・・、このまま寝たい」
ガコッ!
『何を勝手に旅立とうとしているのだ?安心せい、今お主の『治癒』が終わったぞ』
ウードは、なんとか復活するのだった。
「あれ。俺、今死に掛けたか?」