ひょんなことから、マスカー局長と卒業試験に来たクレスです。
お父さん、元気してるかな?
今日は、来たことが無い場所に来ています。
ここは町を出てから馬車で数時間移動して辿り着くタガタ山岳地です。
ここにはワーエイプを始め、様々な魔物が生息している事で有名です。
通常ここに来る人達は、冒険者だけなら4人のパーティーが基本で、パーティーランクもD以上推奨と高めになっています。
そんなところに、まだ冒険者見習いの私は一人で立っています。
もちろん、遠くにマスカーさんがいるんですけど、戦うのは私一人です。
えーと、私何かやらかしたかな?
ここまで必死に努力してきたのに、最後にこの仕打ちはないと思うんです。
ほら今も、Eランク魔獣がわらわらとやって来ては襲い掛かってきます。
最初は泣きたくなるくらい、辛かったけど人間って慣れるんだね?
今ではスムーズに捌けるようになってきたよ。
それは流れる様に、作業のように。
おかげでEランク魔獣のグレードリザードやら、ジャイアントサーペントやら、オオコウモリやらの死骸がそこらに転がっています。
その血の匂いを辿って、今度は山オークがやってきました。
森オークと違い、肌が焼けてこげ茶色しています。
手にはこん棒の代わりに、大きな骨を持っているのだけど、木のこん棒より硬そう。
あんなので殴られたら死んじゃうよぉ。
取り敢えず、弱音は先に吐いおいてから気持ちを切り替える。
こうしたほうが、集中出来るんだよね。
目の前にいるのは強敵。
油断すれば、自分の命はここまで。
既にマスカーさんの事は、頭から綺麗さっぱり抜けていた。
自分の一人で何とかしなければ、死ぬ。
そう言い聞かせて、剣を構えた。
一匹目のオークがどすんどすんと足音を鳴らしながらこちらに迫ってきた。
あとの2匹は、ゲヒゲヒと笑って眺めている。
良かった、私は格下だと思っている。
これなら隙がありそうだね。
ブオオオオオオオオオ!!
雄叫びと共に、骨こん棒を振り下ろしてくる山オーク。
まともに受ければ力の差で吹っ飛ぶのはコッチ。
だから…。
ドオオン!!と轟音を立てて、山オークの骨こん棒が地面に突き刺さった。
人の頭一個分は埋まっている事からも、人間では敵わない怪力だと分かる。
だけど。
ヒュウウウンンッ!!ズアシャアッ!!
ごろんと、転がる山オークの首。
残った胴体は、血しぶきを上げつつ仰向けに倒れていった。
私は間一髪のところで回避に成功し、骨こん棒を振り下ろして無防備になったオークの首を一刀の元、切断に成功したのだ。
一撃で綺麗に落とすのは結構大変なんだけど、今回は綺麗に決まったね。
おかげで剣も刃こぼれしていないみたい。
仲間のオークがやられて、さっきまで笑ってた2匹のオークがその顔を怒りの形相に変える。
何度か地団太を踏んだ後に、猛スピードで2匹いっぺんに襲い掛かってきた。
勢いに乗った一匹の攻撃を私の頭目掛けて振り下ろしてくる。
ゴオオッっと風を切る音を鳴らして、骨こん棒が迫ってきます。
しかし、勢いは違えどさっきと同じ動き。
そこに対して差がある様に感じません。
ただ、それが二匹同時となると話は違う。
片方を防いでも片方の攻撃が辺り、片方を躱しても片方のが当たるかも知れない。
それなら、一体倒してから躱せばいい。
そんな冷静に考えたら無茶な事を考えて、そして実行に移した。
そう、自分が唯一使える魔法『加速』を使い回避しつつ、そこから攻撃をしようと。
この時、私は不思議な感覚を覚えた。
今まで何度修練しても掴めなかった魔力の操作の感覚を。
それが今、自分のおへそあたりのところから何かが流れてきて、全身を巡ってから足に流れていくのを感じる事が出来た。
極限状態で集中したことにより、自分の魔力を意識する事が出来たのかな?
でも出来たなら、後は調整するだけだね!
私は一度覚えた事は忘れない特技を持っている。
しかも、すぐ応用する事が出来る天性のセンスを持っていると教官が褒めてくれたっけ。
魔力を操作して、出力を調整する。
そうすることで、横並びに攻撃してきたオークを『加速』で半歩分だけ躱す。
これで一匹からは、直接攻撃出来ない位置に移動出来た。
近い方のオークが骨こん棒を振り下ろしがら空きにした胴を、クレスはそのまま剣で薙いだ。
その勢いに乗りつつ、更に『加速』を使い、先に倒されたオークの陰になってしまったオークの首をそのまま刎ねた。
あ、両方一気に倒せちゃった。
パチパチパチと後ろから急に拍手が聞こえた。
はっとして、後ろを振り向くとそこにはマスカーさんがいた。
あ、そういえば一緒に居たんだったね。
「お見事です。まさか3匹のオークをこんな短時間でソロ撃破とは…想像以上ですね。これで合格にしてあげたいくらいですが、お題はアッチ。あの猿の方ですからね」
言われて指し示す方を見ると、そこには人間の大人くらい大きい猿がいた。
間違いない、あれがワーエイプだ。
脅威度Dランク。
単体でもかなり強く、肉弾戦でオークを仕留める程の筋力を持つ。
さらに、仕留め損ねたり縄張りに深く踏み込むと、それが群れで襲ってくる魔物である。
幸いにも出てきたのは一匹。
それも若いオスのようだ。
十分に脅威であるが、一体一ならなんとかなる。
…そう思っていたのに!
「うううっ!ぐうっ!」
ドガン!バキン!と拳を打ち付けてくるだけで、剣が折れそうになる。
ワーエイプの拳は岩のように固く、剣を殴っているのに傷ついているのは、クレスの剣の方だった。
しかも、拳だけでなく蹴りや噛み付きなど多彩な攻撃を仕掛けてくる。
なんとも獰猛で、それでいて計算しているかのような動き。
こんなの、教官を相手にしているのと変わらないくらい厳しい。
「こーのうっ!!」
気合でなんとか、組み付いてくるのを弾くが未だにダメージらしきものを与えられていない。
攻撃スピードも、腕力も向こうが上。
このままではクレスの負けは確定だ。
しかし、まだ諦めるわけにもいかない。
マスカーさんは、まだ助けにくる気配は無い。
という事は、まだ試験は続行中という事だ。
ここで自ら放棄するなんて出来ないし、したくない!
そう言えば、魔法指導官が言っていたっけ。
『あなたは、魔法を習得出来ていないんではない。必要分の魔力を操れていないだけ』だと。
それが本当なら、魔力を操作出来るようになった今なら『飛翔』と『電撃』が使える?
『飛翔』は、今この場で使っても意味が無い。
逃げる時なら有用だけど、まだそのときじゃない。
となると、残るは…
あの魔法指導官は魔法はイメージとも言ってた。
だから、イメージイメージ…。
そうすると、まだへその辺りから体中に魔力が流れていくのが分かる。
これを手の先、剣から放出して『電撃』を放つイメージを強く!
「はぁあっ!撃ち貫け『電撃』!」
ピシャアアアアアアアン!!と甲高い轟音を発しつつ、一瞬稲光を放つ。
次の瞬間、そこには黒焦げになったワーエイプが倒れていた。
「やったあああああああああ!」
そこで視界がグラリと揺れる。
うそ、これは魔力切れ?!
だけど、倒れそうになる私を優しく受け止める人がいた。
「おっと、おめでとうクレス。ついに最後の関門を突破しましたね。貴女なら出来ると信じていましたよ。おめでとう、文句なく合格です───」
その言葉を最後に、私の意識は途絶えるのだった。
──翌日
「ここは…」
「あ、起きたねクレス!おはよう~」
「…マリア?」
「昨日、マスカーさんに運ばれてきたときはびっくりしたのよ!まさかクエスト失敗して大けがしたんじゃないかと…。魔力切れだけだから心配ないって聞いていたけど、目を開けてくれて安心したわ」
「そっか、あのあと気を失って…。マスカーさんがここまで運んでくれたんだ」
急激な魔力消費により気絶した私は、マスカーさんによって寮まで運ばれたらしい。
目立った外傷は少ないという事で、そのまま自分の部屋で寝かされたみたいだ。
「うん、そうよ。あ!そうだ。マスカーさんが目を覚ましたら、事務室に来てくれと仰ってたわ」
「うん、分かったわ、ありがとう」
一晩付き添ってくれたらしく、マリアにはもう一度ありがとうと言って抱きしめてから部屋を出た。
話したい事は一杯あるけど、まずはマスカーさんに結果を教えて貰わないとね。
「調子はどうだね?」
「はい、おかげ様でどこも問題ありません」
事務室にやってくると、マスカーさんはいつも通りだった。
でも体調を気にしてくれて、見た目と違って優しいんだなと思った。
失礼になるから口に出さないけど。
「それは良かったよ。昨日はご苦労だった。さて、さっそくだがいいかな」
「はい」
「話は、昨日の試験結果だ」
「はい」
一応、倒れる前に合格と言ってくれたのは覚えている。
覚えているけど、すごいドキドキする。
「結果は、満点合格だ。最後の魔力切れを差し引いても有り余る結果であった。よって、クレスを正式に卒業試験合格とみなす。」
「ありがとうございます!!」
やったー!夢じゃなかった、合格だった。
これでお父さんと一緒に気兼ねなく冒険の旅に出れるね。
あとでお父さんに報告しに行かないと。
「それとだ」
「え、まだ何か?」
「うむ。むしろこっちが本題だ。君は今回倒したのは脅威度Dランクのワーエイプだ。それを見事ソロで討伐に成功した。また脅威度Eランクの山オークを同時に3体をソロで討伐した」
「は、はい。そうですね」
「よって、クレス。君を卒業と共にDランク冒険者と認定する事が決定した」
「えええええっ?!Dランクですか?」
「そうだ、それだけの実力を認められたわけだ。今後とも訓練に励めよ?あと、これは養成学校始まって以来の快挙だ。自分を誇りに思うがいい」
「は、はい!今後とも精進していきます!」
えーと、私、卒業したらDランク冒険者になるみたいです…。
お父さん、びっくりするだろうなぁ…。
お父さん、元気してるかな?
今日は、来たことが無い場所に来ています。
ここは町を出てから馬車で数時間移動して辿り着くタガタ山岳地です。
ここにはワーエイプを始め、様々な魔物が生息している事で有名です。
通常ここに来る人達は、冒険者だけなら4人のパーティーが基本で、パーティーランクもD以上推奨と高めになっています。
そんなところに、まだ冒険者見習いの私は一人で立っています。
もちろん、遠くにマスカーさんがいるんですけど、戦うのは私一人です。
えーと、私何かやらかしたかな?
ここまで必死に努力してきたのに、最後にこの仕打ちはないと思うんです。
ほら今も、Eランク魔獣がわらわらとやって来ては襲い掛かってきます。
最初は泣きたくなるくらい、辛かったけど人間って慣れるんだね?
今ではスムーズに捌けるようになってきたよ。
それは流れる様に、作業のように。
おかげでEランク魔獣のグレードリザードやら、ジャイアントサーペントやら、オオコウモリやらの死骸がそこらに転がっています。
その血の匂いを辿って、今度は山オークがやってきました。
森オークと違い、肌が焼けてこげ茶色しています。
手にはこん棒の代わりに、大きな骨を持っているのだけど、木のこん棒より硬そう。
あんなので殴られたら死んじゃうよぉ。
取り敢えず、弱音は先に吐いおいてから気持ちを切り替える。
こうしたほうが、集中出来るんだよね。
目の前にいるのは強敵。
油断すれば、自分の命はここまで。
既にマスカーさんの事は、頭から綺麗さっぱり抜けていた。
自分の一人で何とかしなければ、死ぬ。
そう言い聞かせて、剣を構えた。
一匹目のオークがどすんどすんと足音を鳴らしながらこちらに迫ってきた。
あとの2匹は、ゲヒゲヒと笑って眺めている。
良かった、私は格下だと思っている。
これなら隙がありそうだね。
ブオオオオオオオオオ!!
雄叫びと共に、骨こん棒を振り下ろしてくる山オーク。
まともに受ければ力の差で吹っ飛ぶのはコッチ。
だから…。
ドオオン!!と轟音を立てて、山オークの骨こん棒が地面に突き刺さった。
人の頭一個分は埋まっている事からも、人間では敵わない怪力だと分かる。
だけど。
ヒュウウウンンッ!!ズアシャアッ!!
ごろんと、転がる山オークの首。
残った胴体は、血しぶきを上げつつ仰向けに倒れていった。
私は間一髪のところで回避に成功し、骨こん棒を振り下ろして無防備になったオークの首を一刀の元、切断に成功したのだ。
一撃で綺麗に落とすのは結構大変なんだけど、今回は綺麗に決まったね。
おかげで剣も刃こぼれしていないみたい。
仲間のオークがやられて、さっきまで笑ってた2匹のオークがその顔を怒りの形相に変える。
何度か地団太を踏んだ後に、猛スピードで2匹いっぺんに襲い掛かってきた。
勢いに乗った一匹の攻撃を私の頭目掛けて振り下ろしてくる。
ゴオオッっと風を切る音を鳴らして、骨こん棒が迫ってきます。
しかし、勢いは違えどさっきと同じ動き。
そこに対して差がある様に感じません。
ただ、それが二匹同時となると話は違う。
片方を防いでも片方の攻撃が辺り、片方を躱しても片方のが当たるかも知れない。
それなら、一体倒してから躱せばいい。
そんな冷静に考えたら無茶な事を考えて、そして実行に移した。
そう、自分が唯一使える魔法『加速』を使い回避しつつ、そこから攻撃をしようと。
この時、私は不思議な感覚を覚えた。
今まで何度修練しても掴めなかった魔力の操作の感覚を。
それが今、自分のおへそあたりのところから何かが流れてきて、全身を巡ってから足に流れていくのを感じる事が出来た。
極限状態で集中したことにより、自分の魔力を意識する事が出来たのかな?
でも出来たなら、後は調整するだけだね!
私は一度覚えた事は忘れない特技を持っている。
しかも、すぐ応用する事が出来る天性のセンスを持っていると教官が褒めてくれたっけ。
魔力を操作して、出力を調整する。
そうすることで、横並びに攻撃してきたオークを『加速』で半歩分だけ躱す。
これで一匹からは、直接攻撃出来ない位置に移動出来た。
近い方のオークが骨こん棒を振り下ろしがら空きにした胴を、クレスはそのまま剣で薙いだ。
その勢いに乗りつつ、更に『加速』を使い、先に倒されたオークの陰になってしまったオークの首をそのまま刎ねた。
あ、両方一気に倒せちゃった。
パチパチパチと後ろから急に拍手が聞こえた。
はっとして、後ろを振り向くとそこにはマスカーさんがいた。
あ、そういえば一緒に居たんだったね。
「お見事です。まさか3匹のオークをこんな短時間でソロ撃破とは…想像以上ですね。これで合格にしてあげたいくらいですが、お題はアッチ。あの猿の方ですからね」
言われて指し示す方を見ると、そこには人間の大人くらい大きい猿がいた。
間違いない、あれがワーエイプだ。
脅威度Dランク。
単体でもかなり強く、肉弾戦でオークを仕留める程の筋力を持つ。
さらに、仕留め損ねたり縄張りに深く踏み込むと、それが群れで襲ってくる魔物である。
幸いにも出てきたのは一匹。
それも若いオスのようだ。
十分に脅威であるが、一体一ならなんとかなる。
…そう思っていたのに!
「うううっ!ぐうっ!」
ドガン!バキン!と拳を打ち付けてくるだけで、剣が折れそうになる。
ワーエイプの拳は岩のように固く、剣を殴っているのに傷ついているのは、クレスの剣の方だった。
しかも、拳だけでなく蹴りや噛み付きなど多彩な攻撃を仕掛けてくる。
なんとも獰猛で、それでいて計算しているかのような動き。
こんなの、教官を相手にしているのと変わらないくらい厳しい。
「こーのうっ!!」
気合でなんとか、組み付いてくるのを弾くが未だにダメージらしきものを与えられていない。
攻撃スピードも、腕力も向こうが上。
このままではクレスの負けは確定だ。
しかし、まだ諦めるわけにもいかない。
マスカーさんは、まだ助けにくる気配は無い。
という事は、まだ試験は続行中という事だ。
ここで自ら放棄するなんて出来ないし、したくない!
そう言えば、魔法指導官が言っていたっけ。
『あなたは、魔法を習得出来ていないんではない。必要分の魔力を操れていないだけ』だと。
それが本当なら、魔力を操作出来るようになった今なら『飛翔』と『電撃』が使える?
『飛翔』は、今この場で使っても意味が無い。
逃げる時なら有用だけど、まだそのときじゃない。
となると、残るは…
あの魔法指導官は魔法はイメージとも言ってた。
だから、イメージイメージ…。
そうすると、まだへその辺りから体中に魔力が流れていくのが分かる。
これを手の先、剣から放出して『電撃』を放つイメージを強く!
「はぁあっ!撃ち貫け『電撃』!」
ピシャアアアアアアアン!!と甲高い轟音を発しつつ、一瞬稲光を放つ。
次の瞬間、そこには黒焦げになったワーエイプが倒れていた。
「やったあああああああああ!」
そこで視界がグラリと揺れる。
うそ、これは魔力切れ?!
だけど、倒れそうになる私を優しく受け止める人がいた。
「おっと、おめでとうクレス。ついに最後の関門を突破しましたね。貴女なら出来ると信じていましたよ。おめでとう、文句なく合格です───」
その言葉を最後に、私の意識は途絶えるのだった。
──翌日
「ここは…」
「あ、起きたねクレス!おはよう~」
「…マリア?」
「昨日、マスカーさんに運ばれてきたときはびっくりしたのよ!まさかクエスト失敗して大けがしたんじゃないかと…。魔力切れだけだから心配ないって聞いていたけど、目を開けてくれて安心したわ」
「そっか、あのあと気を失って…。マスカーさんがここまで運んでくれたんだ」
急激な魔力消費により気絶した私は、マスカーさんによって寮まで運ばれたらしい。
目立った外傷は少ないという事で、そのまま自分の部屋で寝かされたみたいだ。
「うん、そうよ。あ!そうだ。マスカーさんが目を覚ましたら、事務室に来てくれと仰ってたわ」
「うん、分かったわ、ありがとう」
一晩付き添ってくれたらしく、マリアにはもう一度ありがとうと言って抱きしめてから部屋を出た。
話したい事は一杯あるけど、まずはマスカーさんに結果を教えて貰わないとね。
「調子はどうだね?」
「はい、おかげ様でどこも問題ありません」
事務室にやってくると、マスカーさんはいつも通りだった。
でも体調を気にしてくれて、見た目と違って優しいんだなと思った。
失礼になるから口に出さないけど。
「それは良かったよ。昨日はご苦労だった。さて、さっそくだがいいかな」
「はい」
「話は、昨日の試験結果だ」
「はい」
一応、倒れる前に合格と言ってくれたのは覚えている。
覚えているけど、すごいドキドキする。
「結果は、満点合格だ。最後の魔力切れを差し引いても有り余る結果であった。よって、クレスを正式に卒業試験合格とみなす。」
「ありがとうございます!!」
やったー!夢じゃなかった、合格だった。
これでお父さんと一緒に気兼ねなく冒険の旅に出れるね。
あとでお父さんに報告しに行かないと。
「それとだ」
「え、まだ何か?」
「うむ。むしろこっちが本題だ。君は今回倒したのは脅威度Dランクのワーエイプだ。それを見事ソロで討伐に成功した。また脅威度Eランクの山オークを同時に3体をソロで討伐した」
「は、はい。そうですね」
「よって、クレス。君を卒業と共にDランク冒険者と認定する事が決定した」
「えええええっ?!Dランクですか?」
「そうだ、それだけの実力を認められたわけだ。今後とも訓練に励めよ?あと、これは養成学校始まって以来の快挙だ。自分を誇りに思うがいい」
「は、はい!今後とも精進していきます!」
えーと、私、卒業したらDランク冒険者になるみたいです…。
お父さん、びっくりするだろうなぁ…。