―*―*―*―*―*―*―
以来、彼とは大学やその帰りによく遭遇するようになる。
前からすれ違っていたのかもしれないけれど、顔を見知るということは、こんなにも意識が変わるものなのだと再認識する。
彼とは会うと大抵並んで歩くようになり、一緒に電車に乗り込むようになっていた。どうやら自宅最寄り駅が同じ沿線らしく、駅もわりと近いところだという。
一緒になるのは、私が落ち込んでいないか、また罵られたりしないかと危惧してのこともあったのだと推測する。
彼は、こちらの負担にならないラインで、少し強引に心配をしてくれる人だった。
彼と話すきっかけにもなったあの大学での出来事を、もうあまり引き摺っていないのは、私がその人のことを好きではなかったからなのか、彼のおかげなのか。最近は考えながら隣を歩く。
そうして、今日も今日とて、私たちは大学帰りにたまたま一緒になり、そうして一緒に電車に乗り込むのだ。
運良くちょうど乗り込んだ先の近くにふたつ席が空いた。山手線は比較的人の乗り降りが頻繁だ。彼と私はもう慣れた様子で隣り合って空席に座った。相変わらず彼の長い足は、他の男の人とは違って周囲に配慮されたかたちで納まる。背の高さに準じた長さなのに窮屈に見えないのは、無理をしているふうには感じないからなんだろう。
そういうのは、なんだかとても素敵だ。