高校で一緒だった親友は、気持ちの弱い私を嘲ることもなく、ただただそれは普通のことなのだと接してくれる優しい女の子だった。
物事を進めること、考えること、歩調も食べるスピードも、全てがゆっくりとしていた私は、他人から頻繁に鬱陶しいといったような視線を向けられていた。
投げ出さないと、辿り着けるしご飯を残さないのは良いことだと、親友だった彼女は私の日常を否定しないでいてくれた大切な人だった。
そんな優しい彼女が昨日私に溢した言葉は、ふいのものだからこそ本心だったのだと、思う。
現に彼女は、それを口に出してしまった直後、気まずさに耐えきれなくなったのか予定のない駅で下車していってしまった。
昨日の夕方、違う大学に通う彼女と待ち合わせて、一緒に帰っていたときのこと。
思い返しているうちに電車の扉が開き、隣に座っていた私と同じ歳くらいの男の子が慌てて車外に急ぐ。途中、リュックサックに付いていたチェーンが手すりに絡まりそうになったので、気づいた私はそれを阻止した。
扉が閉まったあと、私の行為に気づいていたらしい男の子はこちらを振り返り、はにかみながらぺこりと頭を下げてくれていた。
余計なことをしてしまったかと悩みはじめそうだった私の脆弱な心は、少しだけ浮上する。
このまま、全てのことまで、浮かばれてはくれないだろうか。
もうそろそろ動かなくてはいけない。
サボるなんていけない。
このまま山手線に乗車していても目的の駅には辿り着く。……時間は多くかかるけれど。
あと少しだけと、石像な足を見つめ、気持ちの安定を試みた。